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アドフラウドは不都合な真実?

Ryo Hashisako (Guest Author) Jul 16, 2020

このブログを書いている2020年7月現在では「アドフラウド」という言葉を認知している人もかなり多くなりましたが、それは置き換えると、被害に遭われる方がそれだけ増えてきたということでもあるでしょう。

アドフラウドとは不正広告のことで、アプリ業界では主に不正インストールや偽のアプリ内イベント(課金など)が発生することを指しています。意外と被害が見えにくいのですが、不正広告業者が企業の広告費を横取りしている詐欺行為です。アドフラウドには様々な手法がありますが、詳しくはググるとたくさん出てきますのでそちらを参照いただくことにして、今回は現場で起きたエピソードや個人的に思うところを書いてみました。

 

マッチング系アプリで発生した災難

AppsFlyerはアプリ個別にアドフラウドを監視しており、不正インストールが多く発生しているアプリがあると担当メンバーにアラートが届きます。某マッチング系アプリで不正インストールが多く発生していることを知った私は、さっそくお客様とアポイントを取りました。2018年当時、アドフラウドを知っている人はそれほど多くはない状況でしたが、出迎えてくれた役員の方は挨拶もそこそこに自分のノートPCをくるりと私の方に向け言いました。

「ちょうどフラウドの話をしたかったんです、ちょっとこれ見てくださいよ。」

見せてくれたのは運営しているマッチングアプリの管理画面。そして、会員リストと見られるニックネーム欄には「kqpsxx89e2hdn」のような意味のない単語が1ページ全部を覆っていました。一瞬、パスワードかと思ったもののニックネーム欄だし‥。

「これ‥、何ですか???」

「フラウドですよ、こうやってフラウドが勝手にプロフィール登録までしちゃうんですよ。こんなのが大量にあるんです。うちはCPAで回しているのがメインだからフラウド気にしてなかったんですが、こういうことされちゃうと完全に広告費ドブに捨てているのと同じことなので困ってるんです。」

1インストールあたりXX円というCPI広告ではなく、インストールした後プロフィール登録など、何らかの成果1件あたりXX円で広告費が発生するCPA広告。こちらのお客様はCPA広告をメインで実施していたものの、ボット型の不正広告がこのようにプロフィール登録まで実行することによって、広告主は架空の成果にお金(広告費)を支払っている状況になっていました。さらに、ボットが登録した架空会員のニックネームがアプリに表示されてしまうため、通常の会員から見ると「なんじゃこりゃ?」となり、サービス品質とユーザーエクスペリエンスの低下も同時に引き起こしてしまっていました。

結局、このお客様はAppsFlyerのProtect360というアドフラウド対策機能を導入されることになったのですが、商品説明を始めると記事広告のようになってしまうので次のエピソードに移ります。

 

クレジットカード会社・部長代理のつぶやき

同じ2018年のことです。ある広告代理店から弊社サポート宛に、クライアント(広告主)からアプリストアで見るインストール数とAppsFlyerの数字があまりにかけ離れているという問合せがありました。

一般的に、アプリストアとAppsFlyerのような広告計測SDKはインストール計測の定義が異なるので数字が一致することはありません。よくある質問なのでヘルプページにも掲載しており、今回もまずサポート担当が説明していましたが、それを加味しても数字が違いすぎる、計測に不具合があるのではないか?と、ややクレームっぽい雰囲気になってきました。メールのCCにはクライアントである大手クレジットカード会社のアドレスも。代理店の担当者がクライアントから何度も問合せを受けている(問い詰められている)様子が窺えます。

このアプリを調査したところ直近30日間で3,000件ほどの不正インストールがありました。それは私たちが受け取るアドフラウドアラートの閾値以下ではありましたが、調査を進めると、不正が乖離の原因らしいということが判ってきました。

調査結果を伝えるためにまずは代理店担当者とアポイントを取り、一定の条件を前提に不正インストールの詳細を説明したところ、予想もしない展開にしばし無言。そして‥。

「クライアントへの説明に同行してもらえませんか‥?」

翌週、大手クレジットカード会社オフィスの豪華な応接室にてマーケティング部門の部長代理を筆頭に4名が並ぶ前で、アドフラウドとは何ぞやから今回の数値乖離について説明をしました。すると、現場担当と思われる若手社員から。

「うちなんて、それほどアプリに広告予算使っていない方だと思うのですが、それでも不正広告ってあるんですね。」

そうなんです、広告費の大小ではなく「どこに」広告を出しているかが重要なのです。

そして、若手社員の後に部長代理の方がつぶやきました。

「こんなことがあるのでは、怖くてアプリの広告出せないなぁ‥。」

この言葉に、私は後頭部をバールのようなもので打ち叩かれたような感覚を覚えました。というのは、当時Protect360を導入してくれるお客様が増えており評判も良かったため、「AppsFlyerのアドフラウド対策機能、すごいやろ!(ドヤッ)」という気持ちが自分の中に少なからずあり、それはつまりアプリ広告出稿が当然のようにある前提でいたからです。

ところがこちらの部長代理は、デジタル広告だけでなくテレビCMも交通広告も全てのプロモーションを見ている立場だったので、デジタル広告に不信感があればその予算を他の広告に回す考え方があったのです。

クレジットカード会社と広告代理店がその後この問題をどう取り扱ったかについては当社は関与していないため承知していません。ただ一点、ここから言えることは、先のマッチング系アプリのような分かり易い異常現象よりも、広告に携わっている関係者全員が気付かない、いや、専門的なアドフラウド探知機能がないと気付けないケースの方が多いということです。

 

憎むべきは不正広告業者

昔、『不都合な真実』という地球温暖化問題を直視しない政府を取り上げたドキュメンタリー映画がありました。アドフラウド被害が発覚すると、立場によってそれは「不都合な真実」になります。インストール数がKPIの一つになっているマーケティング担当者は、フラウド対策してインストール数が減ってしまうのは悩ましいでしょう。広告代理店やメディアは売上げが減ってしまうでしょう。認知的不協和を避けるため、皆が何も見なかったことにしてやり過ごせば誰も不幸にならずに一見済みそうです。

しかし、そうしているうちにも、あなたの大切な広告費はこの地球上のどこかにいる不正広告業者に流れ続けています。今見ている各KPIの信憑性も怪しくなってきます。ある日突然「こないだアドフラウドの話を聞いたんだが、うちは大丈夫なんだろうね?」と上司から聞かれるかもしれません。

このようにアドフラウドって、実はすごく利害が衝突する話なんです。広告主は広告代理店を責めたくなり、広告代理店はメディアを責め、メディアは弊社のような計測ツールを責めたくなる。

ですが、このなかに悪意を持って不正広告に加担している人はほぼいなくて、あるアドネットワークでフラウドが発生していても、そのアドネットワーク事業者自身が知らないうちに不正広告業者に利用されているケースがほとんどです。もちろん、不正を排除する努力は広告関係者それぞれがしないといけませんが、憎むべきは不正広告業者なのです。それはまるで、憎むべきは新型コロナウイルスなのに特定の国や政府に矛先を向けていませんか、というのに似ています。

あれから2年経ちますが、アドフラウド絡みの相談は減る気配がありません。そして、そのたびにあの部長代理の言葉を思い出し、不正広告を見過ごしてはいけないと思うのです。なぜなら、デジタル広告にお金が回って来なくなれば、結局この業界で仕事をしている全ての人に影響が及ぶから。

少し意識高いお話になってしまいましたので、最後にもう一つ現実的なことを書くと、今アドフラウドが発生しているのであれば、広告運用のABテストに時間をかけるよりもフラウド対策する方が短期的・直接的にプロモーション全体の費用対効果を改善できるということです。無料でフラウド診断も実施していますので、いつでもお気軽にご相談ください。お問い合わせはtokyo@appsflyer.comまで。