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アプリとエンゲージメントとプッシュ通知

Avatar Naoya Otsubo Jul 26, 2016

婚約指輪というものがある。一般的には結婚してほしい女性に男性から渡すものだ。その際男性はアピールする。自分はどれだけ君のことを愛していて優しくて一緒にいて楽しいのかと。指輪を貰う側の女性はそれを受け入れて初めて指輪を指にはめる。そこにエンゲージメントが生まれる。だから婚約指輪のことをエンゲージ(メント)リングというのだ。

これってアプリを売るデベロッパーとそれを買うユーザーの関係と同じだ。デベロッパーはあの手この手でいかに自分のアプリが面白いか、エンターテイニングかをアピールし、ユーザーは「ふーん」と右に流す時もあれば、「確かにそうかも」と納得しそのアプリをインストールする場合もある。インストールすると、そこにエンゲージメントが生まれるのも婚約指輪と一緒だ。

確かにもはやアプリは身につけてるといってもいいくらい私たちの生活に密着している。日本のスマホユーザーのアプリ使用時間はスマホ使用時間の約80%に至っている。スマホ自体、トイレにもお風呂にも持って行く人たち(自分もそうだ)がいることを考えると、アプリって現代のエンゲージリングっていってもいいのかもしれない。ひとつエンゲージリングと大きく違うことがある。それはアプリではプッシュ通知を出せることだ(こういう指輪ならあるが)。

AppEngagementPush

そしてこのプッシュ通知がユーザーリテンションにおいてアプリというメディアを他のメディアと際立たせている。

従来のオンラインマーケティングにおいては、ユーザーへのプッシュというのはメールマガジンが主流だった。ただしここには3つの難点があった。まずユーザーはすでに大量のメルマガに晒されている。毎日大量のメールを受信するユーザーにとって大多数のメールマガジンはフィルタで一括既読にされるかスパムフォルダ行きを命じられる存在だ。仮に開封されたとしても、特定のページに誘導させるためには、ユーザーにリンクを踏ませないといけない。つまり開封→リンクをクリックという2アクションが必要になる。さらにこれはメルマガというよりもWebというプラットフォーム自体の問題だが、リンクがクリックされたとしてもユーザーはページが遷移するのを待たないといけない。遷移が遅いとその間にユーザーが離脱する可能性が大きく高まってしまう。

課題をまとめるとこうだ(リアルタイム性の低さという点も挙げられるが、メールアプリをユーザーが利用している場合はこれに当たらないので外している)。

  1. 開封率の低さ
  2. ユーザーアクションの多さ
  3. ページ遷移のスピード

一方でアプリというメディアにおいては、プッシュ通知が使える。そしてこれが効果的に機能するのも、最初に触れたようにインストールされた段階でユーザーとのエンゲージメントが一定程度できているからだ。その高いエンゲージメントとリアルタイム性を生かして、50%から80%という高い開封率を維持できる。またメルマガと違い、ワンクリックでアプリを起動することができ、その後のアプリ内アクションにつながりやすい。またアプリの場合はページ間の遷移も非常に早いため、ユーザーのストレスも低く、利用満足度も得られやすい(ネイティブアプリの場合)。まとめると以下のとおりだ。

  1. 高い開封率
  2. ワンアクションでアプリを起動可能
  3. コンテンツ表示速度の速さ

実際にアプリを利用しているユーザーでも、プッシュ通知を受け取っているユーザーとそうでないユーザーにおいては、アプリ起動回数に3倍以上の差が出ている。これがプッシュ通知の威力だ。そしてそれはユーザーリテンションにも大きな影響を与えており、ダウンロードから日数で比較してみると、プッシュ通知を受け取っているユーザーは30日までで65%、90日まででも37%と受け取っていないユーザーの19%、11%と大きな差をつけている。

AppEngagement2

となると、どうやってプッシュ通知の受け取りをユーザーに許諾してもらうかだが、その前に一体どれくらいのユーザーがプッシュ通知を許諾しているのかを見てみよう。URBAN AIRSHIPのリサーチによるとアプリのビジネスカテゴリーごとの許諾率は以下の通りとなる。平均値は42%だ。皆さんのアプリの許諾率と比較してみるとどうだろうか。

AppEngagementPush3

もしこれらの数値と比較して、自社のプッシュ通知許諾率が低い場合、参考にするとよいデータがある。アプリ初回起動後にいきなりプッシュ通知の許諾を取るのではなく、ユーザーが数セッション経験したのちに許諾を取ると許諾率が上がるというものだ。Localyticsのリサーチによると、1から3セッションを経験したユーザーの許諾率(opt-in rate)は35%だが、4から6セッションを経験したユーザーの許諾率は70%と2倍に上昇する。ダウンロード直後は、ユーザーもアプリ内での体験について熟知していないため、プッシュ通知の許諾をためらう傾向にあるということだ。

AppEngagementPush4

ただし許諾を取ったからといって、プッシュ通知を送りすぎてはいけない。Localyticsの別のリサーチによると、同一のアプリから週に2から5のプッシュ通知を受け取るとプッシュ通知をオプトアウトする可能性が高まり、週に6以上送るとアプリがアンインストールされる可能性が高まるという。

AppEngagementPush5

「うちのアプリ、プッシュ出しすぎてないかな・・・」と心配されている場合、プッシュ通知の効果測定機能やユニバーサルアンインストール測定機能を使って、まずは実際の数値の把握から始めることをおススメする。プッシュ通知の配信が2回から5回だと多すぎるといっても、それはあくまで一般的な数字であって、それがそのまま皆さんのアプリに当てはまるとは限らない。無料の機能なので使わない手はない。その数字をもとに、自社独自のプッシュ通知のあるべき姿をデザインしていただければと思う。

それからまだアプリに本腰を入れてない場合も、ぜひ上記を参考にしてアプリサービスの設計を始められることを強くおススメする。後出しジャンケンには勝率が上がるというメリットがある。決して臆することなく新しいマーケティングチャネルとしてアプリを活用していただければと思う。

大坪直哉