モバイル広告不正防止のための基礎ガイド

モバイル広告不正防止のための基礎ガイド

モバイル広告不正(アドフラウド)によるマーケティング予算の損失額は、世界で毎年何十億ドルにもなります。

不正による影響を正確に理解するには、全ての側面(間接的な影響と直接的な影響)について考慮し、オンライン産業の最大の脅威について評価しなければなりません。

ボットやデバイスファームのような不正は、マーケティングキャンペーンに直接的に影響します。広告主にとって何の利益ももたらさない偽のユーザーを生成し、広告費を絞り取るからです。しかし、間接的な影響でも長期的に見れば、将来のキャンペーンにおける広告主の意思決定プロセス、予算配分、オーディエンスのターゲティングプランに対し潜在的な脅威をもたらすことになります。

不正に対し適切に対処するため、マーケターは不正関連の用語を理解し、問題への対処方法を理解する必要があります。

不正事業者がどういった人たちで、自分達のビジネスをどう捉え、どのようなモチベーションで不正を働いているかを理解することで、問題に対する対策を理解しやすくなります。

一般的な不正の手口、使用する技術やツール、そして業界の脆弱性を理解することで、どのような対処が必要になるのかが見えてきます。適切な対処を行うことで、不正事業者の動きを遅めることができるかもしれませんし、完全に不正の脅威をブロックすることができるかもしれません。

このガイドでは、業界の発展とともに進化を続けるオンライン広告不正(特にモバイル広告不正)について解説します。

  • 不正に関する基礎的な用語
  • モバイル広告不正の特徴と影響
  • モバイル広告不正の進化
  • 不正事業者のプロファイル
  • 一般的な不正の手口
  • 現在の市場と主な業種での不正分析

モバイル広告不正は簡単には撲滅できません。

不正に対処するには、まず不正を正しく理解することが大切です。しっかりと不正について理解できたら、実際に悪意のある不正事業者に貴重なマーケティング予算を奪われないように具体的な対策を始めましょう。

知識は力です。準備を整えて不正の脅威に立ち向かいましょう。

 
 

モバイル広告不正(アドフラウド)とは

モバイル広告不正(アドフラウド)とは

オンライン広告は増える一方です。

この業界では、さまざまなチャネルで年間数十億ドルが投じられており、その額もますます大きくなっています。

インターネットの黎明期から、そして世界中の家庭にインターネットが普及してから、オンライン広告はインターネット上でのマネタイゼーション手法において大きな役割を果たしてきました。そしてデジタル広告により、ウェブサイトやアプリは利益性の高いビジネスへと発展しました。

オンラインチャネルの普及とリーチが拡大するにつれ、広告主がオンライン広告にかける予算も大きくなりました。これは、興味やユーザー行動に基づいて、オーディエンスへのリーチを正確に行うためです。

オンライン広告による収益の成長 - 四半期ごと

広告予算とともに増加したのがオンライン広告不正(アドフラウド)です。着実な成長と発展を遂げ、広告主が投じる広告費の一部を不正行為によって騙し取ろうとします。

オンライン広告不正について調査しているレポートにはさまざまなものがありますが、推定される規模と損失額は調査によって異なります。控えめな推計では、年間の損失額は数十億ドルと言われていますが、その他の推計では年間65億ドルから190億ドルまでさまざまな値が発表されています(eMarketer)。

この推定損失額のばらつきは、オンライン広告不正による被害を正確に推定することの難しさの現れです。

利益を得るために新しいテクノロジーを駆使する広告不正技術は、常に進化、発展し、業界のインフラストラクチャに挑戦しています。

モバイル広告不正(アドフラウド)とは

Mobile ad fraud
不正(フラウド)とは、金を騙し取る手口全般のことです。いかなる業界の、どのような取引においても、不正は発生します。​ 不正は発生する業界や業種を問いません。エコシステムにあるルールを悪用したり操作することで不当に利益を得たり、基本的なルールや基準に違反した方法で資金を獲得します。

お金があるところに不正あり

モバイル広告不正を理解するには、混同を避けるために、他のタイプの不正行為も理解することから始めましょう。

不正(フラウド)

不正に利益を得る詐欺行為のこと。オンラインツールを利用される場合と、利用されない場合があります。虚偽の広告や虚偽の情報を使って、何かと交換で価値を提供すると被害者を欺く行為。

例:

オンライン不正

メール、ソーシャルメディア、SMSなどのオンラインツールを利用した不正行為の一種。被害者にリーチして、インタラクション(悪意のあるリンクにクリックさせる、情報を騙し取る、悪意のあるソフトウェアをダウンロードさせるなど)を求め、ユーザーを操り悪用しようとします。

例:

 

オンライン広告不正

不正事業者がオンライン広告のコンバージョンフローを操り広告予算を騙し取る行為。偽のインプレッション数、クリック数、売上、ユーザー数を生成し、CPM、CPA、CPSなどの広告モデルを操ります。

例:

モバイル広告不正

オンライン広告不正の一種。スマートフォンやタブレットなどの、さまざまなモバイルデバイスで行われる不正行為。特に、次の2つのチャネルで横行しています。 
モバイルウェブ - モバイルデバイス上のウェブブラウザ
モバイルアプリ - モバイルアプリケーション環境

例:

 

不正 vs 無効

不正なトラフィックと無効なトラフィックは、区別する必要があります。

オンライン広告不正は、コンバージョンフローやコンバージョンパスを意図的に操作して、広告予算を盗みます。無効なトラフィックとは、意図的か否かを問わず、キャンペーンルールに当てはまらないトラフィックや、広告主が想定していなかったトラフィックのことです。

一般的な例:

  • 誤った地域のターゲティング
  • 不要なトラフィックソース(アダルト、インセンティブなど)
  • キャンペーン上限の超過
  • 広告のスペックやフォーマットの間違い

モバイル広告用語

オーガニックユーザー – 広告とのエンゲージメントのないインストールプロセスを踏んで、アプリをインストールし起動するユーザー。
非オーガニックユーザー – 広告とのエンゲージメント(表示またはクリック)を経て、アプリをインストールして起動するユーザー。

アトリビューションプロバイダー – 広告主とパブリッシャーをつなぐ測定プラットフォーム。専用URLで、広告主のキャンペーン活動を測定。非オーガニックインストールが発生すると、広告主とパブリッシャーの両方にポストバックのサーバーメッセージで通知。

広告 or アド – 広告主のアプリのパブリッシャーのメディアに表示される広告。

広告インプレッション or インプレッション – ユーザーへの広告表示(ビューエンゲージメント)で、アトリビューションのために測定される。

広告クリック or クリック – ユーザーによる広告のクリック(クリックエンゲージメント)で、アトリビューションのために測定される。

インストール – アプリストアからユーザーデバイスへのアプリのインストール。

起動 – ユーザーデバイスでのアプリの最初の起動。アプリを初めて起動した後にのみに、正式なアプリインストールとしてアトリビューションが行われる。

アプリ内イベント – レベル達成やアプリ内購入など、アプリ内で設定し測定するベンチマーク。

アプリ内購入 – アプリのアプリ内ストアで仮想的または物理的な商品の購入。

モバイルアトリビューションとは

モバイル広告不正の仕組みを理解するために、まずアプリインストールのアトリビューションの標準的な流れを説明します。

モバイルアトリビューションフロー

モバイルアトリビューションフロー

  1. ユーザーがモバイルデバイスに表示される広告をクリックします。
  2. 発生したクリックは、その広告枠を管理するメディアパートナーのものとして登録されます。クリックしたユーザーは、デバイスのOSに応じて適切なアプリストアにリダイレクトされます。
  3. クリックはアトリビューションプロバイダーにより測定され記録されます。
  4. ユーザーがアプリストアにアクセスし、アプリをダウンロードします。
  5. ユーザーが初めてアプリを起動します。
  6. アトリビューションプロバイダーは、そのユーザーがオーガニックかどうかを調べるために、アプリのインストールデータとクリックのエンゲージメントデータをマッチングして記録します。
  7. 広告エンゲージメントとアプリのインストールがマッチングすると、ユーザーは非オーガニックとして表示されます。インストールのクレジット(インストールを促進したという評価)が適切なメディアパートナーに付与され、広告主のダッシュボードに表示されます。

上記は、基本的な「ラストクリックアトリビューション」モデルの仕組みを簡単に説明したものです。

このモバイルアトリビューションメソッドは、2011年にAppsFlyerによって初めて導入され、以来、業界全体で使用される標準的な測定およびアトリビューションモデルとなっています。

モバイルアトリビューションについて詳しくは、こちらをご覧ください。 

不正事業者は、このプロセスの抜け穴や欠陥などを見つけ悪用しようとします。

 
 
モバイル広告不正の基本

モバイル広告不正の基本

モバイル広告不正は、広告主のマーケティング活動のあらゆる側面、そして現在だけでなく将来の活動にも影響を与えます。

失われた予算(直接的損失と間接的損失)

最も明白なのは、不正による直接的な金銭的損失です。AppsFlyerの最新のモバイル広告不正データ調査によると、世界のモバイルメディア支出の15%が不正により無駄になっています。

この失われた予算は、収益性の高い他のチャネルで使われていれば、広告主にとって価値を生み出していたかもしれません。これを機会費用と考えることもできますが、不正が長期にわたり規模が大きくなれば、広告主にとって大きなリスクをもたらす可能性があります。

データの汚染

不正によりデータが汚染されていては、データを分析しても「悪質な」メディアチャネルに対し予算を繰り返し分配することに繋がるかもしれません。

不正行為がデータミックスに侵入すると、獲得したユーザーの中から実際のユーザーと偽のユーザーとオーガニックユーザーを区別することがほとんど不可能になります。

最終的に、広告主のデータが汚染され信頼できなくなります。

疲れ果てるリソース

何よりも、不正により膨大な工数が無駄になります。チーム全体が、データ内で異常が見つかった場所の明確化と調整に無数の時間を費やすことになります。

不正の影響

エコシステムへの影響

広告予算が盗まれることで、被害を被るのは広告主だけではありません。不正被害の影響は、マーケティングエコシステムのすべてのエンティティとプレイヤーに波及します。

マーテク(マーケティングテクノロジー)ベンダー

マーテクベンダーは、健全な広告予算を活用して、成功し、開発し、提供するサービスを増やしています。

不正がより多くのマーケティング予算を独占するにつれて、広告ベンチャーは多くの広告主にとって利益性が低くなります。顧客のマーケティング予算に大きく依存しているマーテク企業は、マーケティング活動の縮小により打撃を受けます。

マーテクソリューションにより、広告主は、マーケティング活動の測定性の向上、キャンペーンの最適化、不正の防止が可能になるので、これは良い方向ではありません。

メディアパートナー(アドネットワーク)

不正事業者は、気がつかれないようにエコシステムの複雑さとその中の仲介エンティティを悪用します。そして、多くのアドネットワークはトラフィックが不正に汚染されていることに気づいていません。

広告主は、広告予算をSRNにシフトし、よりクリーンなトラフィックを得るためにメディアポートフォリオを少なくしています。そのため、不正対策が十分でないと、アドネットワークは評判を失い、主要な広告主との将来のビジネスを危険にさらす可能性があります。

さらに正当なネットワークであっても、アトリビューションハイジャックにより偽のクリックでクレジット(インストールを促進したという評価)を盗まれれば、質の高いユーザーを提供しているという評価を失うことになります。

パブリッシャー

知名度の高いアプリとウェブサイトの所有者は、トラフィックの収益化によって生じる収益に大きく依存しています。

ドメインスプーフィング不正は、アトリビューションURLに自分達のドメイン名を人為的に挿入し、トラフィックを売るように見せかけて、ソースから収益を直接盗みます。このアクションによって、安価で購入し転売された偽のトラフィックまたは質の低いトラフィックを、高レートのアドエクスチェンジプラットフォームを介して隠すことができます。

モバイル広告不正の手がかり

他の犯罪と同様に、モバイル広告不正にも、不正と識別し、そのオペレータを洗い流すのに役立つ手がかりとなる指標があります。

アトリビューションプロバイダーによって収集されたデータを分析して、ユーザー行動やデバイスセンサーなどの異常を特定できます。データをもとに正当な活動パターンがどのように見えるかを割り出すことで、異常な行動を浮き出させます。

データ分析が識別に大きな役割を果たします。大規模なデータベースに依存することで、不正を正確に識別できるようになり、多くの不正なパターンを迅速かつ効率的に特定できます。

CTIT graph ad fraud

CTIT

クリックからインストールまでの時間(Click To Install Time)のことで、ユーザーによる最初の広告とのエンゲージメントと最初のアプリ起動の、ユーザージャーニーにおいて測定されたタイムスタンプ間のガンマ分布を測定したもの。
  • CTITが短い (10秒未満):不正(インストールハイジャック)の可能性 
  • CTITが長い (24時間以上):不正(クリック洪水)の可能性
Device ID reset fraud

新規デバイス率(NDR)

広告主のアプリをダウンロードするデバイスで、新しいデバイスが占めるパーセンテージを新規デバイス率(New Device Rate)と言います。新規のユーザーやデバイスを持ち替えた既存ユーザーが、新しいデバイスでアプリをダウンロードするのは普通のことです。しかし、アクティビティのNDRの許容値を理解し監視することが必要です。NDRはデバイスIDを測定して得られる値です。デバイスIDリセット不正でNDRを正常に見せかけようとするのが、デバイスファームで行われる一般的な手口です。

Device sensors ad fraud

デバイスのセンサー

デバイスのバッテリーの残量からデバイスの角度にいたるまで、さまざまなデバイスのセンサーを利用して生体行動分析を行います。これらのセンサーにより、一つひとつのインストールについてのプロファイルを作成し、デバイスとユーザー行動を分析して、実際のユーザーのインストールで見られる通常の傾向に当てはまるかを判断します。
Limit ad tracking mobiel ad fraud

広告トラッキングの制限(LAT)

広告トラッキングの制限(Limit Ad Tracking) は、ユーザーが設定できるプライバシー機能で、ユーザーのデバイスで静施されたアクティビティについて、どのデータを広告主が受信できるかを制限します。ユーザーが、このLAT機能が有効になると、広告主と測定ソリューションが受け取るデバイスIDは空になります。

不正事業者は、自分達のデバイスのLATを有効にすることで、不正の手口を隠そうとします。このKPIの影響を受けるのは、GoogleとiOSの広告識別子だけで、AmazonやXiaomiなどは、他の識別子を使用しています。

conversion rates digital advertising fraud

コンバージョン率

コンバージョンとは、ある状態から別の状態に変化することを言います。たとえば、広告のインプレッションがある状態から広告をクリックした状態へ、クリックした状態からインストールした状態へ、インストールした状態からアクティブユーザーへといった変化です。ユーザージャーニーのどのポイントにおいても、想定されるコンバージョン率を広告主が把握することで、不正を防ぐことができます。

コンバージョン率が高くなりすぎる場合は、不正を疑うのが良いでしょう。

Artificial intelligence mobiel ad fraud

AI

不正検知システムにAIが使用されることが一般的になりました。大規模な不正検知ロジックがAIで可能になっています。どんな規模でも、人間では追跡できないようなインスタンスをAIは追跡できます。 

機械学習アルゴリズム(ベイジアンネットワーク)と、大規模なモバイルアトリビューションデータベースにより、効率的で正確な不正検知ソリューションが構築できます。

不正事業者のプロファイル

一般的な不正事業者の現在のプロファイルを調べると、市場認識の誤解に気づきます。

多くのマーケターは、不正は悪意のもと秘密の場所から実行された操作であるとして認識しています。多くの場合、不正事業者はパーカーやマスクを着たハッカーだと考えられています。

Fraudster profile

実際には、不正事業者は秘密に活動しているどころか、活動の一部を公開している場合があります。しかし、多くの場合、不正事業者は自分達が不正を行っていると考えておらず、むしろそれをサービスとして提供していると考えています。

平均的な不正行為は、主流のハイテク企業により正当に行われているように見える場合があります。様々なボット、エミュレーター、その他の悪意のあるツールの使用は、不正ではなく「製品」または「ソフトウェアリリース」と呼ばれています。

これらの企業は、いまどきのオフィスを持ち、年金プログラム、および給与を従業員に提供しています。彼らは優秀な人材と経験豊富なエンジニアを雇用し、優秀なBIチームを擁しています。そして、ターゲットを賢く選択し、ターゲットの保護機能をかわす「製品」を開発しています。

これらの企業は、すべてが計算に基づき、目標指向でROIドリブン、そして大規模です。

広告不正の対策に効果的に取り組むためには、まず、広告不正を行っている人々が、不正をブロックしようとする人々よりも賢く考え方が前向きであることを認識する必要があります。

もう1つのよくある誤解は、通常、不正は広告ネットワークや悪意のあるメディアソースによって引き起こされるという認識です。そのような場合も確かにありますが、必ずしもそうではありません。不正行為はさまざまな方向から発生し、業界の構造を利用して成長しています。

広告主の不正

オンライン業界において立場はダイナミックに変動します。誰でも、広告主、パブリッシャー、メディエーターになりえます。悪意のあるアプリは、マルウェアやアドウェアを実行し、幅広いオーディエンスにリーチし、大規模に不正行為を実行します。そして、悪意あるアプリもマーケティングキャンペーンを利用します。最初は無害に見えアプリでも、ユーザーのデバイスにダウンロードされたとたんに、悪意あるアクティビティを開始したりサポートしたりします。それぞれのアプリについて、ログイン情報やパーミッションがバックエンドで使われていないこと、また使われているならどのように使用されているかを注意深く確認してください。

メディエーター不正

広告主とパブリッシャーの間にいるのがメディエーターです。メディエーターが、自分達の利益のためにトランザクションを操る手口は数多くあります。その手口のひとつに、ドメインスプーフィングがあります。この手口では、メディエーターは、パブリッシャーのドメインまたはアプリがより魅力的に見えるよう改竄し、CPIが高いように見せかけます。もうひとつの手口に、広告スタッキングがあります。この手口では、1つの広告枠に対し複数の広告を重ねて同時に配置するため、実際に表示されている広告は1つだけになります。

パブリッシャー不正

パブリッシャーが自分達の特定のサービスの報酬を多く得るために不正を働くことがあります。たとえば、パブリッシャーが常時アプリ上でボットを実行しアクティブにアプリを利用させ、広告をボットに表示しインプレッションを稼ぎます。ボットは、アプリ内でクリックやアプリ内エンゲージメントを実行することもできます。ディスプレイ不正は、一部のパブリッシャーで盛んに行われている手口で、無効な広告枠を使ったり、メディアの質を実際よりも良く見せかけたりすることで、自分達のサービスの対価以上の報酬を絞り取ろうとします。

ユーザー不正

市場に出ているアプリのほとんどが無料で利用できます。アプリで収益を獲得するには、無料ユーザーから有料サービスを利用するユーザーに一定の割合でコンバージョンさせることが大切です。ユーザー不正は、アプリ内での自分での立場を良くしたり、有料サービスを無料で利用したりするためにユーザーがアプリのマネタイゼーション構造の裏をかく不正行為です。ゲームアプリのリソース搾取ボットや、出会い系アプリのスワイプ回数制限の解除など、デベロッパーが想定していない利用方法でアプリを欺きます。このようなユーザー不正は、アプリによる収益の獲得を阻むことになります。

一般的な不正ツール

不正事業者は独創的で創造的であり、活動をさらに発展させるため常にツールの改良を行っています。

デベロッパー、広告主、ユーザーが使用する一般的な正当なツールは、多くの場合、不正の機会を作成する特定の機能を悪用するために操作され使用されます。

Device emulator ad fraud

デバイスエミュレーター

エミュレーターは正当なゲームデベロッパーが利用する一般的なツールです。エミュレーターで仮想デバイス環境を構築し、さまざまなアプリの機能をテストします。不正事業者は、このエミュレーターをデバイスの模倣に利用します。大量のデバイスをエミュレーターで模倣し、広告やアプリとの偽のインタラクション(やりとり)を生成します。

エミュレーターは簡単にダウンロードできます。新しいデバイスやユーザーの再作成も簡単に行え、ボットやスクリプトを使えば大規模に操作することが可能です。

VPN proxy tools mobiel ad fraud

VPN プロキシツール

VPNを利用すると、デバイスはインターネット接続の際に、インターネットサービスプロバイダー(ISP)ではなく、選択したプライベートサーバーに接続し、そこからインターネットに接続します。デバイスがインターネットにデータを送信する際は、直接インターネットにデータが送信されるのではなく、VPNで接続しているサーバーを介してインターネットに送信されます。

不正事業者は、ブラックリストに加えられないよう自分達のIPアドレスを隠すためにこのツールを悪用します。このツールを使えば、広告主が希望している地域からエンゲージメントを獲得できているように見せかけることもできます。

Malware mobile ad fraud

マルウェア

マルウェアとは、デバイス、サーバー、クライアント、コンピューターネットワークに危害を加えることを目的とし設計されている悪意のあるソフトウェアのことです。不正事業者は、さまざまなマルウェアを設計し開発します。マルウェアは、デバイスやサーバーに侵入し、セキュリティを侵害し抜け穴を作ります。不正なデータを作成し、広告主やユーザーを悪用します。

不正の進化

不正は常にオンライン広告業界の一部であると言えます。お金を稼ぐチャンスがあれば、基本的なCPCキャンペーンであっても、不正は発生してきました。

広告主とウェブサイトをつなぐために、1990年代初頭にメディエーションアドネットワークが登場しました。

1990年代のドットコムブームにより、パブリッシャーの多様性と規模が大幅に増大し、さまざまなアドネットワークへの扉が開きました。さらに、Yahoo!ディレクトリなどの最初のディレクトリやAlta Vistaなどのキーワード検索エンジンが、目的のサイトにアクセスしたり、ウェブサイト間を簡単にナビゲートしたりするために登場しました。

1990年代後半と2000年代前半の初期の広告不正の手口は、主にデスクトップベースのクリックスパムや検索エンジン操作に焦点をあてたものでした。

オンライン業界の進化

オンライン業界の進化

2008年、Apple App Storeが発表され、モバイルデバイスを通じてインターネットにアクセスできる新しい時代が始まりました。

アプリ環境とモバイルウェブの導入により、2010年代にオンライン広告が急増し、モバイルとアプリが徐々に広告の大きな部分を占め始めました。

2010年までは、広告主や不正事業者が注力していたのが、デスクトップのアクティビティでした。モバイル予算が増加するにつれて、不正は徐々にモバイルへフォーカスをシフトし始めました。最初は一般的なデスクトップ不正手法をモバイルアクティビティに適用して、新しい環境の可能性をテストしました。

モバイル広告とウェブ広告のトレンド

モバイル広告とウェブ広告のトレンド(出典 – PWC IABレポート)

モバイルフロントに向かって拡大する業界の関心を悪用するアプリのインストール不正は、時間とともに増加しています。アプリストアのランキングが、広告主による新しい注力点となり、短期間で大量のインストールを獲得するために「バースト」キャンペーンを広告主が利用するようになりました。これにより、不正事業者がインセンティブと低品質のチャネルno悪用を始め、偽のユーザーによるスパムを広告主に発生させるようになりました。

しかし、アプリストアのランキングアルゴリズムが進化するにつれ、「バースト」キャンペーンも時代遅れになっています。新しいモバイル環境に対するアプリ開発者の理解も成熟し、インストール数を膨らませることよりも、質の高いアクティブユーザーの獲得に焦点があたるようになりました。

業界が進化するにつれて、アドエクスチェンジ、SSP、DSP、メディアエージェンシーなどのメディエーションポイントが、広告主とパブリッシャーの間にあるジャーニーに加わり、それぞれが、透明性、トラフィックの品質、配信の基準に関する独自の視点を持つようになりました。

不正は、現在の業界の複雑さを利用して増加しています。不正事業者は、透明性も抜け穴として悪用します。通常発生する不一致や、技術開発の試みを報告して、さまざまなプラットフォームにおいてさまざまな規模で自分達のスキームを実行しようとします。

 

オンライン広告エコシステム - 不正

不正は複雑なエコシステムのどこにでも存在できます

さまざまなメディエーションプラットフォームでのオンラインパブリッシャーまたはメディアソースのアカウントは、ダミー企業やその他の偽装技術を使用して簡単に作成して偽装できます。

こういった偽装アカウントは、他のソースとともに、大量のデータで混ざり合い、汎用的なIDでのみ識別されます。そうなると、会社名とは離れたところで悪質な活動を実行できるので、手口を隠すのに役立ちます。

他の広告モデルであれば、CPM、CPA、CPSを隠せば、偽のインプレッション数、クリック数、売上、さらにはユーザー数を生成することで、操ることが簡単です。不正が検知されブロックされても、IDやビジネスエンティティ(事業)を新しくすれば、不正行為を継続することができます。

 
 
モバイル広告不正の手口

モバイル広告不正の手口

モバイル広告不正の手口はさまざまで、いくつかのパラメーターに基づいて異なる悪質な手法を用います。

  • 不正事業者のターゲット&目標
  • 悪用できる弱点と抜け穴
  • 利用できる技術
  • 手口の熟達レベル
  • 利用できる資金

上記のような条件をもとに、不正事業者は自分達が働く不正の種類、規模、標的を決定します。

最も一般的な不正の手口は、次のような2つのタイプに大きく分けることができます。

モバイル広告不正 - タイプ

モバイル広告不正 – タイプ

不正の手口

2つのタイプでの大きな違いは、不正に利用されるユーザーが実際に存在するかどうかです。

ユーザー - 不正ブレイクダウン

アトリビューションハイジャックは、実際のユーザー(オーガニックまたは非オーガニック)を装い、偽のクリックレポートを送信してアトリビューションのコンバージョンフローを操る手口です。ユーザージャーニーのあらゆるポイントで偽のクリックを生成し、他のメディアソースで実際のコンバージョン(インストールやユーザーが生成)があった際に、そのクレジット(コンバージョンを促進したという評価)を盗みます。

フェイクインストール(偽のインストール)は、偽のユーザージャーニーを生成する手口です。ユーザージャーニー全体がフェイクで、インプレッション、クリック、アプリ内イベント、ユーザーの全てが嘘ということになります。

どちらのタイプも広告主のアクティビティとリソースに損害を与えます。アトリビューションハイジャックでは、ユーザーが実際に存在するので、広告主にとっていくらか価値が残る可能性がありますが、広告主が得るユーザー獲得データ全体が全く価値の無いものになります。フェイクインストールでは、広告主にとって価値のある要素が全くありません。

次に、これらの2つタイプで、最も多い手口を具体的に解説していきます。

アトリビューションハイジャックの手口

アトリビューションハイジャックの手口

インストールハイジャック

インストールハイジャックは、他のメディアソースが生成したインストールのクジレット(インストールを促進したという評価)を「ハイジャック」する不正です。一般的な手口には、不正なクリックレポートの送信または不正なリファラデータの挿入があります。

 

インストールハイジャック - 不正

インストールハイジャック – 不正

たとえば、Androidユーザーが正当なメディアパートナーによって提示された広告をクリックします。するとユーザーはPlayストアにリダイレクトされ、そこでアプリをダウンロードします。ダウンロードプロセスが開始すると、新しいアプリがダウンロードされていることが、デバイス上の他のアプリに通知されます。この通知は、Androidの標準のブロードキャストを使用して行われます。

ブロードキャストは、どのアプリにも実装されている機能です。この時に、マルウェアを持つ別のアプリがユーザーのデバイスに存在していたとしたら、このブロードキャストがトリガーとなり、マルウェアを呼び起こします。

マルウェアは、偽のクリックレポートを自動生成し、そのインストールを生成したのは不正事業者であるかのように見せかけます。 つまり、インストール前の最後のクリックが不正事業者によって生成されたと見せかけることで、ラストクリックアトリビューションモデルを悪用します。

アプリが起動すれば、そのインストールのクレジット(インストールを促進したという評価)は不正事業者のものとなります。

インストールハイジャック

インストールハイジャック

不正事業者にとって、基本的なアトリビューションモデルを悪用することはそれほど難しいことではありません。しかし、このタイプの不正行為を検知することも、標準的なCTIT測定と異常検知機能を使えば、難しいことではありません。

不正事業者のクリックはアプリのダウンロード中に送信されるので、登録されるクリックの時間が正当なソースにより生成されたクリックの時間よりも大幅に遅くなります。

したがって、CTIT(クリックからインストールまでの時間)が短ければ、インストールハイジャックが仕掛けられていると考えられます。

高度な不正防止ソリューションには、アトリビューション調整機能があり、クリックのタイムスタンプをもとにインストールのクレジット(インストールを促進したという評価)を正当なメディアソースに付与することができます。これにより、広告主のユーザー獲得レポートやリターゲティングデータに対する被害を最小限に抑えることができます。

クリック洪水

クリック洪水は、実際にあるデバイスから、または実際にあるデバイスを装って、不正事業者が不正なクリックレポートを大量に送信する不正行為です。 実際のデバイスがアプリをインストールすると、不正なクリックレポートを大量送信していた不正事業者であるサブパブリッシャーが、そのインストールのクレジット(インストールを促進したという評価)を不正に獲得します。

クリック洪水

クリック洪水

クリック洪水の多くは、オーガニックユーザーによるインストールのクレジットを盗もうとする不正です。ある確率のもと成果を高めるためには、多くのオーガニックユーザーのデバイス情報が必要になります。

不正事業者は、さまざまなアトリビューションチャネルでパブリッシャーアカウントを作成し、できるだけ多くのアプリのアトリビューションURLを集めます。

実際のデバイス情報を載せたクリックを大量に生成するには、ユーザーデバイスにインストールされたマルウェアを利用することもありますし、ユーザーデバイスの情報を悪意のあるチャネル(ダークネット)で購入することもあります。

クリックは、ランダムに生成されるか、ユーザーのインストール済みアプリや閲覧アクティビティに基づいて計算されたタイミングで生成されます。

デバイス情報を悪用されているユーザーがApp StoreまたはPlayストアにアクセスしてアプリをダウンロードすると、広告の閲覧もクリックも実際にはなかったにもかかわらず、不正に生成された偽のクリックが、そのダウンロードに紐付けられます。

そしてユーザーがアプリを起動すると、不正事業者がそのインストールのクレジットを獲得します。本来はオーガニックインストールであるにも関わらず、広告主はそのインストールに対し対価を支払うことになります。

クリック洪水の流れ

クリック洪水のフロー

クリック洪水の検知とブロックは、さまざまな方法で行えます。コンバージョン率が非常に低い場合は、クリック洪水が疑われます。また、CTIT測定でも、クリック洪水を検知できます。

CTIT(クリックからインストールまでに時間)が長くなると、クリック洪水の発生が疑われます。これは、ユーザーのアクティビティやアプリのインストール時間に関係なく、ユーザーの代わりにクリックが常に送信されるからです。

アトリビューションハイジャック – ポイント

複雑さ

アトリビューションハイジャックは、比較的簡単な手口だと考えられています。使用されるテクノロジーも基本的なものです。使用するデータも実際のユーザーデータであり、不正事業者がポストバック情報を不正に挿入して操作する必要がありません。

Complexity mobile ad fraud
Potential gain mobile ad fraud

得られる利潤

アトリビューションハイジャックから得られる利益は、いくつかの理由で大きくないと考えられています。シンプルな操作で実行される手口であり、この不正を不正検知ソリューションで検知(タイムスタンプからCTITを測定し異常を検知)することも難しくありません。実際のユーザーのデバイス情報を悪用するので、この不正の規模も限られています。

ビジネスへの影響

アトリビューションハイジャックは、実際のユーザーのデバイス情報を利用した不正行為です。その実際のユーザーがコンバージョンすれば、広告主にとっても利益であり損害はないように見えるかもしれませんが、これは誤った見方です。獲得したインストールが、本来は無料で獲得できたはずのオーガニックインストールであれば、広告主に不当な獲得コストが発生することになります。実際にインストールを促進した正当なパブリッシャーがいる場合は、そのインストールの対価はインストールのクレジットを盗んだ不正事業者に支払われることになります。この不正行為によりユーザー獲得データの質が低下すると、その後の予算配分にも悪影響を及ぼし、正当なパブリッシャーではなく不正事業者のソースに予算が多く分配されることになります。

Business implications mobile ad fraud

 

フェイクインストール不正の手口

フェイクインストール不正の手口

 

デバイスファーム

デバイスファームは、実際のモバイルデバイスを大量に集めて、それらのデバイスで実際の広告のクリックと、実際のアプリのダウンロードを行う拠点のことを言います。不正のIPアドレスの裏でインストールごとにデバイスIDを更新し、不正を行います。  

デバイスIDリセット不正

デバイスIDリセット不正

寝室や倉庫など、大量のデバイスを設置し操作できるスペースがあれば、デバイスファームはどこでも作ることができます。そのため、デバイスファームによる不正は世界のあらゆる場所で行われています。2010年代初頭に、その数は大きく増加しました。デバイスファームの操作は、低賃金労働者またはエミュレーターによって行われます。アプリのエンゲージメントとデバイスのリセットが24時間を通して継続的に実施されます。

エンゲージメントの作成とデバイスIDのリセットが効率的になるほど、収益は増加します。

デバイスファームによる不正は、比較的単純な手口です。安価なモバイルデバイスが手に入るようになったことと、経済の停滞が重なり、副業としてのデバイスファームが一般的な欧米の家庭に広まり、デバイスファーム流行の第2波を生み出しています。

デバイスファームの識別

新しいデバイスは珍しいものではありません。さまざまな理由でユーザーはデバイスを絶えずアップグレードしたり持ち替えたりします。当然、どのキャンペーンでも新しいデバイスが使われていることを見ることができます。ただし、それぞれのキャンペーンでの新規デバイス率(NDR)に異常がないかを監視することが必要です。デバイスファームでは、大量のデバイスでデバイスIDのリセットを行っているので、新しいデバイスの使用率(NDR)が高いと、デバイスファームによるアクティビティであることが疑われます(デバイスファームの識別には、その他のパラメーターも使用します)。

AppsFlyerのデータによると、キャンペーンでの一般的な新規デバイス率は、10%~20%を上回らない程度です。

新規デバイス率

新規デバイス率

ボット

ボットは所定のプログラムまたはアクションを実行する悪意のあるコードです。実際のデバイス上で稼働することも可能ですが、多くはサーバー上で稼働しています。ボットは実際に発生していない偽のクリック、インストール、アプリ内イベントを送信します。 

ボット不正

ボット不正

ボットは、ユーザーフローやアプリ自体のアクションを自動化するために利用されます。前述の不正手口にも、ボットは利用されます。ユーザーのデバイスにインストールされているマルウェアで行動生体認証データを収集し、そのデータに基づいてボットは実際のユーザー行動を模倣します。

bots and mobile ad fraud

ボットをトレーニングすれば、本当の人がアプリを操作しているような動きを再現できるようになります。このようなトレーニングを受けたボットによる不正行為は検知もブロックも難しくなります。不正事業者は、高度な不正検知ロジックを想定してボットをトレーニングし、アプリ内で測定されるエンゲージポイントで実際の人がアプリを利用しているように見せかけます。これによりアプリ内イベントでのCPA収益を多く獲得し、自分達がエンゲージメントの高いユーザーを提供する優良なパブリッシャーであるように見せかけます。

不正事業者の中にはサービスとしてボットを提供する者もいます。ボットのサービスとしては、サードパーティのための、ゲームリソースの収穫、レベルの達成、収益の生成などがあり、これはFAAS(Fraud as a Service)とみなされます。

フェイクインストール – ポイント

複雑さ

フェイクインストールは、始めるにも継続するにも複雑な手口です。この手口を行うには、継続的にユーザーを生成する入念なメカニズムを設計できる高度な技術力が必要になります。また、高度なパターン検知アルゴリズムの網の目をかいくぐるように、行動をランダムにしながら大規模に実行する技術力も必要です。

Complexity mobile ad fraud
Potential gain mobile ad fraud

得られる利潤

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操作も運用も複雑な手口であるフェイクインストールは、規模を無限に拡大できます。実際のユーザー情報を利用するアトリビューションハイジャックと異なり、ボットとデバイスファームによる手口なので、実際のユーザーを必要としません。場合によっては、実際のデバイスも必要なくなります。偽のユーザージャーニーをでっちあげ、利益を上げるための操作を際限なく行います。

ビジネスへの影響

アトリビューションハイジャックと異なり、偽のインストールを獲得することになるので、広告主にとっての利益は全くありません。ユーザーもすべてフェイクで、アプリ内でのエンゲージメントをプログラムにより実行することで、CPAの報酬を広告主から不当に絞りとり、大きな損害を与えます。測定するデータも、実際のユーザーと偽のユーザーのデータが混在してしまうので、広告主がリターゲティングにデータを活用することも難しくなります。

Business implications mobile ad fraud

SDKハッキング

インストール不正の検知機能を欺くために、不正事業者はSDKを模倣して偽のインストール情報などを広告主のサーバーに送信します。正当なSDKを装って情報を送信するSDKハッキング(SDKスプーフィング)はボットベースの不正の一種で、多くの場合、ユーザーのデバイスにインストールされた別のアプリに潜むマルウェアによって実行されます。

SDK hacking

SDKハッキングでは、別のアプリ(被害アプリ)でインストールやクリック、エンゲージメントがあったかのように見せかける偽の信号を送信するコードを、アプリ(攻撃アプリ)に潜ませる不正行為です。

ボットによる偽のインストールであるにも関わらず、その信号を受信したサーバーは本当のインストールであると判断するので、広告主は偽のインストール(時には数千件に)に対価を支払うことになります。

脆弱なセキュリティインフラやSDKを持つアトリビューションプロバイダーにとって、SDKハッキングはよくある問題です。採用している暗号化メカニズムが貧弱(解読しやすい)であったり、オープンソース技術(コードが公開され不正事業者に丸見え)を利用していれば、不正事業者によりアトリビューションプロバイダーのプログラム(コード)が欺かれたり、リバースエンジニアリングで抜け穴を見つけられたりすることになります。SDKがクローズドソースで暗号化されていれば、リバースエンジニアリングやプログラムが欺かれることの脅威に対する防止効果が高くなります。たとえばAppsFlyerのSDKは、コードは非公開で暗号化されているので、堅牢なセキュリティを実現しています。

ここで肝に銘じておくべきは、完全なセキュリティを実現する方法はないということです。高い技術を持つハッカーであれば、ハッキングできないものはないかもしれません。そこで、コードとインフラの両方において堅牢なセキュリティと不正防止対策を施すことが重要です。簡単にハッキングさせないようにすることで、リスクを最小限に抑えられます。

アプリ内不正(CPA不正)

2008年、App StoreはCPIプロモーションモデルを導入しました。これは、生成されたアプリのインストールの数に対してメディアパートナーに報酬を与える方式で、アプリデベロッパーに最も採用されているモデルです。

Fraudulent in-app event

CPI(インストールあたりの単価を設定)モデルにより、インストール不正が横行するようになり、広告主は価値の低いユーザーを獲得するようになりました。そこで、インストール不正による被害を低減するために導入されたのが、CPA(アクションあたりの単価を設定)モデルです。

 

CPAモデル(アクションあたりに単価を設定するモデル)は、インストール後もアクティブなユーザーは、不正なユーザーではなく、質の高いユーザーであるという前提の上に成り立っています。これにより、広告主(特にゲーム業界の)は重要なアプリ内イベントを洗い出し、ユーザーLTV(顧客生涯価値)の測定を開始しました。

  • レベル達成
  • チュートリアルの完了
  • アプリ内購入の実施

これらのイベントに設定されるCPAの料金(アクションあたりの単価)は、CPI(インストールあたりの単価)モデルのよりもかなり高く設定されました。エンゲージメントの多いユーザーは、LTVと獲得価値が高くなるからです。CPAモデルで広告不正被害を充分に防止でき、同時にユーザー価値を向上させることができるという考えのもと、CPAモデルを採用する広告主がさまざまな業種で時間とともに増えていきました。

しかし先述のように、お金の集まるところは不正行為の標的になります。このCPAモデルへの不正事業者の対応は非常に迅速でした。不正の被害に合わないと考えられていたCPAモデルも、今では広告不正の大きな標的となっています。

CPAモデルに移行することでインストール不正率を低減した広告主(主にゲーム業界、ショッピング業界、旅行業界)は、今では高度なボットによる不正に悩まされています。これらのボットはインストール不正検知機能の網の目を潜り、広告主が対価を支払うことになるアプリ内イベントを実行するよう設計されています。これにより、広告主はアプリ内で損害を被っています。

アプリ内購入不正

アプリ内購入とアプリ内マーケットプレイスは、広告主が実際の製品(商品、サービス、製品)または仮想商品(ゲームリソース、成果物など)を販売し収益を生み出す一般的な方法です。

大半のアプリのビジネスモデルは、無料またはフリーミアムモデルです(有料アプリは4%未満)。アプリのダウンロードを無料にして、広告やアプリ内購入から収益を得ています。アプリのビジネスモデルは、多くの場合、一定のペースでトランザクション(収益)を生成できるように展開されます。生成されるトランザクションに応じてパブリッシャーに報酬が支払われます。

CPSモデル(売上あたりに単価を設定)では、市場で最も高い料金が設定されます。質の高いユーザーが集まっていて、広告主の収入が保証されているからです。価格体系は、売上に対するパーセンテージや一律固定などさまざまです。 成功すればCPIよりも大きな利益を得られるCPSモデルを掌握するために、不正事業者は可能な限り何でもするでしょう。

アプリ内不正は進化を続け、アプリ内購入不正の発生件数の増加がすべての主要な業種で顕著になっています。

フォールスポジティブテスト

フォールスポジティブ(False positive)とは、正当なインストールを不正と判断する誤検知のことを言います。

不正検出アルゴリズムの精度は、フォールスポジティブテストを行って設定されます。精度が高いほど、不正検出は厳格になります。精度が低ければ、アルゴリズムの許容範囲が広くなります。検知する不正が増えれば増えるほど、フォールスポジティブのケースが増えることになります。

「高い精度」 = 「低いフォールスポジティブ率」

フォールスポジティブテスト図

フォールスポジティブテスト図

モバイル広告不正は広告主のビジネスに与える損害と同程度に、フォールスポジティブ(誤検知)が悪化している可能性があります。これは、インストールが不正であると誤って判断されたケースを示すからです。

不正を不正と判断してブロックするトゥルーポジティブ(True Positive)のケースとは異なり、正当を不正と判断するフォールスポジティブ(False Positive)のケースは、正当なソースにとって不利に働くことになります。正しく不正を検知できなければ、悪質なメディアパートナーから広告主を守ることができないからです。それどころか、質の高いメディアパートナーと広告主の関係が損なわれてしまう可能性があります。

不正ソリューションを提供する上での責任は、不正の見落としを可能な限り低減して顧客の最善の利益を守ること、そしてソリューションの完全性と信頼性を守ることです。

不正事業者は、フォールスポジティブを回避しようとする不正対策ベンダーの意図を完全に把握し、正当なインストールと不正インストールを意図的に混在させます。この手口はトラフィックの改善手段ではありません。この手口の目的は、質の悪いトラフィックをごまかすことです。混在している正当なトラフィックやインストールは、不正行為がブロックされた時に、その正当性を主張するための材料として利用されます。

 
 
モバイル広告不正の市場の対応

モバイル広告不正の市場での対応

モバイル広告不正の影響を理解するには、主要な業界・業種の全体的な影響と、非ゲームアプリとゲームアプリとの違いを明確に理解する必要があります。

ゲームアプリの広告主の多くは、デジタルマーケティングに精通しています。データドリブンであり、ユーザージャーニーのあらゆるポイントについての認識が高く、不正事業者につけいる隙を与えません。

ゲームアプリの広告主は、インストール数を増やすことよりも、エンゲージメントの高いユーザーに重点を置いています。そのため、CPI(インストールあたりの単価)が大幅に低くなりますが、その代わりにアプリ内イベントやCPAが高くなります。

この構造により、アプリとのエンゲージメントを多く行う質の高いユーザーを提供しようとパブリッシャーは努めることになります。また、インストール不正率も3.8%という低い値にとどまっています。

だからといって、ゲームアプリには不正の心配がないというわけではありません。不正事業者は、CPAの設定されたアプリ内イベントにフォーカスを移し始めており、測定されるアプリ内不正も年々増えています。

異なる業種で発生する不正

異なる業種で発生する不正

インストール不正は、ゲーム以外の業界(特にファイナンスアプリ)で多く発生しています。ファイナンスアプリでインストール不正が高くなる要因には次のようなものがあります。

  • 大規模なマーケティング予算
  • デジタルKPIに対する認識不足 — 銀行や投資会社はデジタル広告の初心者
  • 市場で最も高い平均CPI料金

旅行アプリやショッピングアプリも、CPIやマーケティング予算が比較的高いため、高いインストール不正率に悩まされています。しかしこれらの業種は、デスクトップ時代の初期からオンラインでビジネスを展開してきた経緯もあり、オンラインKPIに精通しています。

非ゲームのアプリのインストール不正率は現在31.8%です。アプリインストールの3回に1回は不正インストールということになります。

すべての業種の不正率については、AppsFlyerのモバイル広告不正レポート 2020をご覧ください。

iOS vs. Android

オペレーティングシステム(OS)ごとにアプリのインストール不正について見てみると、AppleのiOSは非常に脆弱であることと、Androidユーザーが6倍以上のインストール不正率に苦しんでいることがわかります。

アプリをストアに掲載する際に厳しい審査を行うなど、Apple iOSはクローズドなアプローチをとったことで、ユーザーにとって安心な環境を提供しています。しかし、ストアによる防御規制を掻い潜るクリック洪水にiOSは依然悩まされています。

iOSとAndroidでの不正率

iOSとAndroidでの不正率

一方、AndroidはオープンなOSであり、悪用する機会や抜け穴を求める不正事業者の標的になっています。Appleデバイスとは異なり、Androidデバイスでは、ストア以外でのアプリダウンロードを許しています。従来のアプリストア(GooglePlayとAppStore)の外で見つけることができるアプリは、ユーザーがAPKバージョンを見ることができるようになっています。

従来のアプリストア以外のストアは、誰にでも公開されており、フィルタリングプロセスがないため、悪意のあるアプリに汚染されていることがあります。これがAndroidの高いインストール不正率として現れます。アプリストア外のアプリは、ユーザーの認識や同意なしに、マルウェアやアドウェアをデバイスに取り込み不正行為を行うことが多いからです。

ポストアトリビューション検知

不正の検出は、インストールアトリビューション後も実行する必要があります。ここ数年でアプリ内イベントをターゲットにする不正が増えているためです。

 

Post attribution fraud detection

不正防止ソリューションの進化とともに、不正の手口も巧妙化しています。不正検知ロジックに検知されないようにインストール不正の手口も改良されています。たま、不正行為の標的にCPIだけではなく、CPAも含める動きが増えてきています。また、標準的なインストール不正検知機能に検知されないような新しい手口も出てきています。

新しい手口は、インストールのアトリビューションの後に、遡って不正として検されます。

最初のアトリビューションの時点では不正と判断できなかったものでも、新手の不正クラウスターやパターンとしてデータを割り当てることで検知できるようになります。

新しい不正の論拠の確立に役立ったインストールは、不正ソースと紐づくアトリビューションが行われた後に拒否されます。クラスターが不正と正しく結論づけるのに充分な統計的優位性に達したら、遡って不正の検出を行います。

長年にわたる業界の誤解は、すべての不正がリアルタイムで検知されブロックされるべきだという考えです。AppsFlyer独自のポストアトリビューション不正検知ソリューションでは、平均で少なくとも18%の不正行為は、アトリビューション後でしか識別できないことがわかりました。これにより、市場のブラインドスポットが明らかになっています。 

アトリビューション後に遡って検知を行うレイヤーを追加しなければ、これらの不正インストールは検出できませんでした。

金額的影響

モバイル広告不正による金額的影響を正確に測定することは、広告主ごとに具体的なビジネスへの影響もあり、簡単ではありません。

ただし、ある特定期間で不正行為の脅威にさらされていた金額(不正行為にさらされたマーケティング活動の量)を計算することは可能です。AppsFlyerは、世界中のモバイルマーケティング活動を測定しています。データも安全で正確な算出が可能です。

データによれば、2019年には約48億ドルがモバイル広告不正にさらされたと推定されます。

2020年上半期の現在の推計は次のとおりです。

 

16億ドル

世界的危機

不正は地域性のある問題だと思っている人もいるかもしれませんが、全く事実は異なります。

このガイドの冒頭に書いたことを思い出してください。お金があるところに不正ありです。

世界的に、モバイル広告不正で多くのお金が騙し取られています。

技術的に進んでいない開発途上市場は、多くの場合、他の成熟市場よりも規制が緩く、不正事業者の活動に理想的です。しかし、エミュレーター、VPNプロキシ、およびその他の技術ツールを使えば、国境は無関係になります。そして、不正はどの国にも侵入してきます。

世界的フラウド危機

世界的フラウド危機

米国、カナダ、ドイツなど、一部の成熟市場では、インストール不正率が他の市場よりも低い場合があります。しかし、世界的にマーケティング予算の大半が使われているのは、これらの市場です。なので、不正率が低くとも成熟市場での不正による金額的な影響は、不正率が高くマーケティング活動が活発ではない発展途上市場が受けている影響を上回る可能性があります。

モバイル広告不正、そしてオンライン広告不正は、モバイルデバイスのアクセシビリティの向上、経済の発展、世界の消費文化があるからこそ、世界的危機になっていると言えます。

抑えるべきポイント

  • モバイル広告不正は、成長を続ける業界全体の問題です。年間の損失は数十億ドルにのぼります。
  • 不正事業者は独創的で創造的です。不正手口は時間とともに進化します。業界の規制や不正防止メカニズムに順応し、それを回避する手口を生み出します。
  • モバイル広告不正には大きく2つのタイプがあります。それぞれの不正は、手口、使用する技術、規模が異なります。
  • 不正はビジネスです。不正事業者は自分達のROIを追求し、お金があるところで活動します。
  • モバイル広告不正に限度はなく、ユーザージャーニーのどこでも発生します。業種や国にも限定されません。チャンスがあれば、不正はどこでも発生します。
  • 現在のエコシステムには、先進的で高度なモバイル広告不正防止ソリューションが必要不可欠です。いかなる規模のどのようなオンラインマーケティングにおいても、セキュアで堅牢なインフラに、新旧の不正手口を識別しブロックできる柔軟なソリューションが必要です。

モバイル広告不正からビジネスを守る方法についてはこちらでお読みください。 

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