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ATTポップアップの必要性と表示するタイミング

執筆者 Shani Rosenfelder
ATTポップアップの必要性と表示するタイミング | AppsFlyer

ものごとはタイミングが大事、とよく言われますが、AppleのAppTrackingTransparency (ATT) フレームワークにも同じことが当てはまります。去年リリースされたiOS 14で紹介されたATTフレームワークは、ユーザーのiOS端末にランダムに割り当てられているデバイスID(IDFA)を取得する際に、ATTポップアップの画面を表示してオプトイン方式でユーザーの同意を得なければなりません。この画面をどのタイミングで誰に見せるかは、アプリ側がコントロールできます。

ATTポップアップの表示方法に関しては、使用言語、カスタマイズ可能な範囲、オプトイン率UPのために自社ポップアップを活用する方法など、さまざまな議論が交わされてました。今回のブログでは、ATTポップアップをなぜ見せる必要があるのか、そして見せるタイミングはいつなのか、この2点について説明したいと思います。

まずはATTポップアップを見せる必要性についてお話しします。

ATTポップアップを表示したほうがいい理由

ATTポップアップを見せるべき理由はいくつかあります。第一に、これまでのATTオプトイン率が予想以上に高いことがあげられます(オプトイン率の詳細な数字は、定期更新しているATTダッシュボードをご覧ください)。

IDFAを取得しておこなうアトリビューション計測がマーケティング活動において最有益であることはさておき、ATTオプトイン率が高いとほかにもメリットがあります。

1) 広告収益に依存しているアプリ/ゲームアプリの場合、ATTポップアップに同意したユーザーグループの需要は多くCPMの増加につながります。

2) たとえ数が少なったとしても、一部のユーザーからIDFAを取得できれば、それを外挿してSKAdNetwork計測のデータと比較しながら適宜最適化することができます。 

3) イベントの一部をユーザーレベルのデータでネットワークに送信することでキャンペーンを最適化できます。

iOS 14 ATT optimization

ATTポップアップを表示したくない理由

ATTポップアップを表示させるメリットがある一方で、表示しないことを選択するアプリもあります。

ユーザーレベルのアトリビューション計測を実施するには、広告表示側と広告主側の両サイドにATTポップアップを表示して、ぞれぞれからユーザーの同意を得る必要があります。けれど、集約化されたSKAdNetwork計測でも十分な効果を得ることが可能です。サードパーティなどによって提供されているSKAdNetworkに特化したソリューションを活用すれば、ATTポップアップを表示することなくマーケティング活動を最適化できます。

ATTポップアップを表示することで、かえってユーザー体験を妨げてしまい、アンインストールにつながるのではないかと懸念しているアプリも一部存在します。

このようなアプリは、マーケティングに頼らなくても良い環境に置かれている場合が多く、ユーザー体験を妨げないように、またアプリが削除されないように、ATTポップアップを非表示にすることを選んでいます。ただ、ライバルとの差別化や収益化をはかるには、マーケティングに頼らざるを得ない状況下にあるアプリが大半のため、たとえトラッキングの許諾率が低かったとしても、一部から取得できるIDFAを活用するに越したことはありません。

もちろん、ただ時間稼ぎをしているアプリもあります。全ユーザーがiOS 14.5にアップデートするまでにはしばらく時間がかかることが予想されるため、ATTの実装を急ぐ必要はいまのところなさそうです。

業界を取り巻く環境が目まぐるしく変化しているいま、ATTの実装が普及するまではまだ時間がかかりそうです。ATTポップアップの影響はどれほどのものか、そしてATTポップアップをいかにして活用するか、ATTを実装せずにとりあえず様子見をしているアプリもあります。

ATTポップアップを表示する方向で調整している場合は、いつどのタイミングでユーザーにポップアップを見せるか検討する必要があります。検討が必要な項目は以下のとおりです。

ユーザーとの信頼関係は長期的な利益につながる

ブランドが成長していくうえで、ユーザーとの信頼構築は欠かせません。

知名度が高いブランドほどオプトイン率が高くなりやすく、ブランド力が低いとオプトイン率につながりにくい傾向にあります。

これはアプリのブランド認知度が高いか低いかにかかわらず、アプリとユーザーの関係性についても同じことが言えます。アプリのファンとなって継続的に利用しているヘビーユーザーは、そのアプリの仕様や使い勝手を熟知しているため、iOS 14.5にアップデートしてからはじめてATTポップアップを目にしてもオプトインを許可する傾向にあります。

アプリとの関係をしっかり築けているユーザーは、たとえ表示されたポップアップの内容がわかりづらかったとしても(特にiOS 14.5リリース直後、ユーザーがまだATTポップアップに慣れていなかった頃)、そこで離脱してしまうということはありません。

iOS 14 ATT opt-in brand

ユーザーが各フェーズでとる行動

アプリ内のユーザー行動は、アプリ初回起動→1回目のセッション→利用2日目→それ以降のアクション、というように、逆ピラミッド型のフェーズに段階分けすることができます。iOS 14における「それ以降のアクション」とは、アプリがインストールされてから数日以内に発生したアクションを意味します。

各フェーズごとに、ATTポップアップを表示させるタイミングがそれぞれ異なります。

  1. 前半:例)アプリ初回起動、1回目のセッション、同日にアプリを再度起動、ゲームをレベル3までクリアするなどの小さなアクション
  2. 中間:例)アカウント作成、サブスク登録、3日連続でアプリを起動するなどの継続的なエンゲージメント
  3. 後半:例)課金、予約、購入や、サービス・商品の良さを世の中に広めるなどのアプリに貢献するアクション
ATT funnel iOS 14

前半フェーズでATTポップアップを表示させた場合、大勢のユーザーにアプローチすることができます。同意を得たユーザーグループのデータをもとに、キャンペーンを早期に最適化できます。

【前半フェーズの注意点】アプリ/ブランドにまだ慣れ親しんでいないユーザーが含まれているため、わずらわしい印象を与えてしまう可能性があります。

中間フェーズに進むにつれて、ユーザーも少しずつアプリに慣れ親しみ、オプトインする可能性が高まります。中間フェーズでATTポップアップを表示させるベストなタイミングは、利用規約やプライバシーポリシーの同意を求める際に、ATTポップアップもいっしょに見せるとオプトインにつながる可能性があります。

【中間フェーズの注意点】上から下にフェーズが進むにつれて、アプリを削除するユーザーが出てくるため、既存ユーザー数が減ります(※7日目のリテンション率は平均10%のみ)。アプリを削除するユーザーは、質が低いユーザーと考えられるため、ユーザー層を絞り込めて良かったと考える人もいるかと思います。けれど、質が低いユーザーの行動を把握することは、質の高いユーザーの行動を把握することと同じくらい重要です。質の高いユーザーだけを分析してマーケティング活動を最適化するのは、データ量が限定的になるため逆にハードルがあがってしまいます。

後半フェーズになると、アプリのサービスや商品の良さを知り、アプリのいちファンとして費やす時間もお金も多くなります。したがって、後半フェーズでATTポップアップを表示させた場合、オプトイン率がいちばん高くなる確率が高いです。

このことからわかるように、ひとつとして同じやり方はありません。アプリの目的、ターゲット層、認知度がATTオプトイン率を大きく左右することになります。

アプリジャンルごとにATTポップアップの戦略が異なる

アプリごとにユーザー層が異なるため、普遍的に適用できるATTポップアップはありません。

サブスク事業のアプリ、広告収入に頼っている無料のゲームアプリ、アプリ内課金に依存しているミッドコアゲームアプリなど、アプリのタイプが異なればATTポップアップを表示させたほうがいいタイミングも異なります。

広告収入に頼っているゲームアプリの場合、最初の広告を見せる前にATTポップアップを表示することができます。

Netflixのようなサブスク事業のアプリは、アカウント作成直後にATTポップアップを表示させて良いでしょう。アカウントを作成する過程で、ある程度アプリに慣れ親しむことができるからです。

ブログのまとめ

  • ATTダッシュボードの数字にも表れているとおり、ATTポップアップを見せるべき正当な理由があること。ただし、ユーザー体験の妨げやアプリの離脱・アンインストール率を防ぐために、ATTポップアップを見せないアプリも一部存在する。そうしたアプリは代替として集約レベルのSKAdNetworkを使用する。
  • ユーザー行動の前半フェーズでATTポップアップを見せれば、キャンペーンを最適化できる範囲がひろがる。逆に中間~後半フェーズでATTポップアップを見せた場合、ユーザー数が縮小されるため、キャンペーンを最適化できる範囲が狭まる。
  • ユーザー行動の後半フェーズでATTポップアップを見せれば、オプトイン率は高まる(アプリインストール後数日以内)。アプリの価値を熟知したユーザーは、オプトインする確率が高くなる。
  • ブランド力が強いアプリはユーザーからの信頼も高いため、オプトリン率が高くなる傾向にある。ブランド認知度が低いアプリを使いこなしているヘビーユーザーにも同様のことが言える:このようなヘビーユーザーはiOS 14.5にアップデートしても、躊躇せずATTポップアップに同意する。

ATTポップアップはまだ謎に包まれていることが多く、使える手段はこのさき数週間から数か月にかけて答えを導き出すことができるのではと考えています。次回の投稿をお楽しみに!

Shani Rosenfelder

Shaniは、AppsFlyerのコンテンツ&モバイルインサイトの責任者。10年以上にわたり、さまざまな大手オンライン企業や新興企業で、コンテンツやマーケティングの重要な役割を担ってきた経験を持つ。創造性、分析力、戦略的思考を兼ね備え、革新的なコンテンツ主導型プロジェクトを通じてブランドの評判と知名度を高めることに情熱を注いでいる。
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