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クリエイティブテストのブループリント:インパクトの大きい広告キャンペーン戦略

執筆者 Shani Rosenfelder
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デジタル広告キャンペーンの成功要因を考えたことはありますか。トレンドが季節のように移り変わる現在のデジタルマーケティングやアプリマーケティングにおいて、キャンペーンの成否はクリエイティブテストを効果的に行えるかどうかにかかっています。 

クリエイティブテストとは 

クリエイティブテスト(広告の事前テストとも)は、市場における広告のパフォーマンスを予測することを目的としたデータ主導のプロセスです。具体的な成果をもたらすアイデアに予算を絞り込みたいクリエイティブチームにとって、いわば優れた武器であるといえます。

マーケターをマエストロとするなら、広告クリエイティブは交響曲の楽譜に相当します。この記事では、オーディエンスの心に響く調べ(=キャンペーン)をどのように組み立てるべきなのかを解説します。以下にプロセスの概要や主な指標についてまとめましたので、ぜひクリエイティブテストにトライし、面白さを実感したうえで、これが一番重要ですが、成果につなげていただければ幸いです。

では、さっそく見ていきましょう。

クリエイティブテストが重要な理由

クリエイティブテスト

クリエイティブテストは、デジタルマーケティングやアプリマーケティングにおいて多面的な役割を果たします。テストの目的は、単に新しい広告を作成するだけではなく、以前のマーケティング活動を上回る成果を上げる広告にブラッシュアップすることです。目標は常に「対照」を上回ることです。対照とは、パフォーマンスベンチマークを設定したキャンペーンにおいて現時点で最もパフォーマンスの高い広告を指します。 

やるべきことがほかにもたくさんある中で、クリエイティブテストを重荷に感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、競争の激しい現在の市場では、このステップを飛ばすべきではありません。競合の先を行くには、常にクリエイティブを更新し続けていく必要があります。それができなければ、クリエイティブ疲労(英語記事)が発生し、広告のパフォーマンスが低下してしまうでしょう。 

クリエイティブテストは、収益にも影響します。テストを怠ると、クリエイティブプロセスの効率が悪くなり、効果の薄い広告に時間とお金を費やすことになりかねません。  

広告クリエイティブのテストが欠かせない主な理由を以下にあげます。

  • クリエイティブの説得力が増す:クリエイティブテストにより、オーディエンスに響く魅力的でインパクトのある広告を作成できるため、広告費回収率(ROAS)の向上につながります。
  • 予算を最適化できる:クリエイティブテストにより、効果の薄い広告に予算を費やさずに済みます。さらに、キャンペーンの成功要因に焦点を当てることで広告を改善できるため、予算を賢く使えます。
  • 貴重な顧客インサイトを得られる:クリエイティブテストにより、キャンペーンに対する顧客の考えについて貴重なインサイトを得られるため、クリエイティブをデザインする際のより良い意思決定につながります。
  • 反応の良いアセットを特定する:クリエイティブテストにより、オーディエンスからの反応が良いクリエイティブ要素(コンバージョンにつながる要素など)を特定できます。
  • 次のステップを描ける:クリエイティブテストにより、コンセプトを検証してキャンペーンに適したメディアを選択するためのインサイトを得られるため、ビジネスの規模拡大につながります。

つまり、クリエイティブテストは広告の世界における羅針盤であり、オーディエンスにポジティブな影響を与える広告を作成し、予算を最適化して、最終的にマーケティングでより良い成果を上げるための指針となります。

クリエイティブテストのプロセス

実のところ、クリエイティブテストの設定と実行にはそれなりの習熟が必要です。ですが、心配はいりません。コツさえつかめば万事うまくいきます。テストの一連のステップは次のとおりです。 

1 – ギャップ分析を行い、クリエイティブの隔たりを確認する

クリエイティブテストは、ギャップ分析という重要なステップから始まります。ここでは、運用中の広告をめぐる状況を評価し、広告フォーマット、予算配分、ターゲットオーディエンスの属性、メッセージ戦略などのギャップや機会を特定します。 

これらのギャップを効果的に埋めて、包括的なマーケティング目標に合わせて広告クリエイティブを改善する準備がこれで整います。

2 – 目標/KPIと仮説を設定する

次に、クリエイティブテストの明確な目標と重要業績評価指標(KPI)を定義します。このステップがテストプロセス全体の指針として機能し、目標達成のために明確な方向性を示します。 

目標設定

仮説の設定も重要です。仮説はテスト手法の土台であり、最良の結果をもたらすクリエイティブ要素を推測する際の大きな判断材料となります。レースで最有力候補に賭けるようなものです。

3 – 複数の広告バリエーションを作成する

目標が定まったら、次は文字どおりクリエイティブになりましょう。 

さまざまな要素のクリエイティブ戦略をテストするために、複数の広告バリエーションを開発します。これらのバリエーションには、見出しのテキスト、ビジュアル、CTA(行動喚起)ボタン、広告の配置など、幅広い要素が含まれます。クリエイティブを多様化することで、オーディエンスの好みをより深く理解できます。

4 – テスト手法を選択する

クリエイティブテストを成功させるには、適切なテスト手法を選択することが肝心です。主なアプローチは次のとおりです。

  • テスト:A/Bテスト(英語記事)(スプリットテストとも)では、1か所だけを変えた2パターンの広告(AとB)を比較し、パフォーマンスの高いパターンを特定します。たとえば、CTAの文言やボタンの位置を変えるなどが考えられます。この手法により、広告のパフォーマンスに対する単一の変数の影響を切り分けることができます。一度に1か所を変更する対照実験を行い、より効果の高いパターンを確認できます。
  • 多変量テスト:より複雑なテストを行う準備ができたら、多変量テストを試してみましょう。この手法では、さまざまな広告要素に含まれる複数の変数を同時に分析し、複合的な影響を調査して、広告のパフォーマンスを最適化します。
  • リフトテスト:リフトテストでは、キャンペーンに接触していない対照群と広告のパフォーマンスを比較し、広告の真の効果を計測します。広告がない場合と比較することで、広告がもたらす増分値について貴重なインサイトを得られます。ノイズとして入ってくるさまざまな要素をふまえつつ、マーケティングの実際の効果を判断できます。
インクリメンタリティテスト

これらのテスト手法はそれぞれ得意分野が異なり、用いるべき状況も異なります。テストの目的や引き出したいインサイトに合わせてきちんと使い分ける必要があります。  

5 – テストを設定し開始する

テスト戦略が整ったら、いよいよ実行に移しましょう。 

このフェーズでは、広告配信、オーディエンスターゲティング、テスト継続期間などのパラメーターを設定します。設定がすべて完了したら、きめ細かく作り込んだ広告バリエーションを公開し、ターゲットオーディエンスとつながる準備を整えます。

6 – 広告のパフォーマンスを分析する 

出稿中は、データを収集し、分析しましょう。 

カスタムダッシュボードを構築して、定義済みのパフォーマンス指標とKPIを視覚化し、解釈します。これにより、どのクリエイティブ要素が成功に寄与しているのか、またどの要素に調整が必要なのかを確認し、最適化を進めることができます。

7 – 最適化を続ける

クリエイティブテストのプロセスは、ローンチして終わりではなく、継続的な最適化が成功を持続させる鍵となります。 

分析から得たインサイトをもとに広告クリエイティブを改善し、イテレーションを行うことで、パフォーマンスを強化し続けることができます。この継続的なプロセスにより、広告キャンペーンが常に動いているため、オーディエンスのニーズや好みの変化にも対応しやすくなります。

クリエイティブテストの指標

クリエイティブテストの指標

コアオーディエンスの90%(英語記事)近くは、初めは思うようにCTAに反応してくれないかもしれません。これは、注目されていないわけではなく、広告クリエイティブが彼らの心に響いていないことが原因かもしれません。

クリエイティブテストの指標を計測することで、この問題を解決し、ターゲット属性に強いインパクトを与えるクリエイティブを特定できます。

ここでは、追跡すべき重要な指標をいくつか紹介します。

1 – インプレッション

インプレッションは、広告キャンペーンの基軸となる指標で、ユーザーの画面上に広告が表示された回数を指します。クリエイティブコンテンツの最初のリーチと露出を確認する指標です。

2 – 動画の3秒再生率

この指標はインプレッションにとどまらず、エンゲージメントにまで踏み込んでいます。総インプレッション数に対して、動画が3秒以上再生された割合を計測します。比率が高い場合、広告コンテンツに視聴者の注意を引きつけ、維持できるだけの十分な魅力があることを意味します。

3 – 平均視聴時間

平均視聴時間では、広告の視聴時間(視聴者が広告コンテンツにとどまっている時間)を追跡し、視聴者の注意を引きつけて維持する効果についてインサイトを得られます。平均視聴時間が長ければ、広告コンテンツに魅力があり、人を引きつける力がある証拠です。

4 – リンククリックスルー率(CTR)

CTRは、いわばCTAの成績表です。広告にエンゲージしたオーディエンスのうち、指定したリンクを実際にクリックしたか、期待するアクションを実行した人の割合を算出します。CTRが高ければ、広告が視聴者の行動喚起に成功しているということです。

5 – 獲得あたりのコスト(CPA)

簡単に言えば、CPAは予算の監視役であり、新規リードや顧客の獲得に費やされるコストの総額に目を光らせています。この指標を追跡することで、獲得活動の金銭面を常に把握できます。

6 – コンバージョンあたりのコスト(CPC)

CPCは、達成されたコンバージョンにどの程度のコストがかかっているかを示します。これを計測することで、広告展開の効果を適切に把握し、予算を戦略的に最適化できるようになります。

7 – 広告費

広告費は、広告キャンペーンへの投資総額です。予算管理は成功の要であり、投じた費用に見合う成果が出るようにこの指標を注視する必要があります。

8 – 広告費回収率(ROAS)

ROASは、広告費の対価として発生した総収益を示します。これは最終収益であり、広告キャンペーンの全体的な収益性をより明確に把握できます。ROASが100%を超えた場合、投資収益率はプラスであるということです。

クリエイティブ広告テストのベストプラクティス

ベストプラクティス

クリエイティブテストで重要なのは、勝てる広告クリエイティブの組み合わせを見つけることです。デザインとメッセージの最適な組み合わせを特定し、テスト計画に従って、期待する結果を得られるように規模を拡大します。

ここからは、クリエイティブテストのプロセスをマスターするためのベストプラクティスを紹介します。

1 – 明確な仮説を立てる

これはつまり、テストで何を知りたいかということです。仮説を立てることで、CTA、画像、見出しなど、テスト対象の変数を決める際の指針となります。具体性が重要です。オーディエンスの好みを調査するなら、「明るい背景に暗いCTA」、あるいは「暗い背景に明るいCTA」、という具合です。

焦点を絞った仮説を立て、それをベースにしてアセットを選択します。仮説がなければ、変数の分類が意味をなさず、テストの焦点が定まらないばかりか、価値も意味もない欠陥だらけのデータしか得られない可能性があります。

2 – 予算を設定し、均等に配分する

A/Bテストの適切な予算を求めるには、獲得あたりのコストにコンバージョン数を掛けます。たとえば、コンバージョンの目標が1万ドルで、CPAが2ドルの場合、テスト予算は合計2万ドルになります。

テストの各コンポーネントには、同等の予算を設定するようにしてください。これを怠ると、一部のパターンがより多くの注目を集めたり、接触が増えたりして、結果に影響を与える可能性があります。 

3 – クリエイティブテスト全体のロードマップを作成する

複数のクリエイティブテストを連続して実施することを検討している場合は、それらをつなぐ明確なテスト計画が必要です。それらがどのように影響し合うのかを明らかにすることで、有用かつ実用的なインサイトを継続的に得られます。

また、全体の流れを意識して、次の点をふまえ、広告の各要素を準備するようにしてください。

  • クリエイティブのアイデアを表現することにフォーカスする。
  • 前後でテストするほかの要素よりも目立たせる。
  • 一貫性を維持し、結果に影響を与える可能性のある余分な変数は追加しない。

4 – テストを急がない

有意な結果を得るには、十分な時間をかけてテストすることが重要です。

キャンペーンの目的とオーディエンスの規模にもとづいて、テストの最適な実施期間を判断しましょう。テスト期間が短すぎると、パフォーマンスに揺れが生じるかもしれません。同様に、テスト期間が長すぎると、リソースの浪費につながります。

5 – 自動テストツールを使用する

広告パターンの作成と調整をすべて手作業で行わなければならないとしたら、いかがですか。

大規模なクリエイティブテストは、自動化ツールなしでは信じられないほど大変で退屈な作業です。注意したいのは、手作業に疲れ果ててしまい、より価値のある創造的な業務に取り組めなくなってしまうことです。

広告デザインを手動でテストする場合も、さまざまな面を追跡しなければならず、楽ではありません。言うまでもなく、有料ソーシャルプラットフォームではすべてのパターンに広告費が均等に配分されるわけではないため、手動では正確にテストできない可能性もあります。

ここで自動化を用いれば、大規模なテストにつきものの反復作業から解放されます。自動テストツールにより、可能な限りの広告バリエーションを生成し、テストキャンペーンを設定できます。予算、広告配信、オーディエンスの管理も自動化され、すべてのパターンが同じ条件でテストされます。

6 – テストオーディエンスに別の広告を見せないようにする

テストオーディエンスには、クリエイティブテストキャンペーンと関係のない広告を配信しないようにしましょう。テストと無関係の広告が表示された場合、次の2つの反応がみられます。 

  • ユーザーが広告疲れを起こす。 
  • ユーザーが何らかの行動を起こす気になる。

いずれの場合でも、無関係な広告に接触することでオーディエンスの行動が変化し、テスト結果の精度に影響を与える可能性があります。最善の策は、クリエイティブテストのラウンドごとに対象のオーディエンスを変更することです。テストの精度が保たれ、結果に偏りが出にくくなります。

7 – IDFA/SKAN4への対応も忘れずに

ポストIDFASKAN 4.0の時代では、オーディエンスを引きつけ、関係を維持することが最優先事項です。データが少なくなり、KPIが変化する中、広告で真のつながりを築けるかどうかが大きなポイントです。 

その場の状況に合った広告を配信し、オーディエンスに違和感を抱かせないようにしましょう。また、さまざまなプラットフォームでインサイトを活用する、インクリメンタルテストを統合して広告の真の影響を評価する、予測モデリングを活用してユーザーのプライバシーを損なうことなくデータ主導の選択を行うなどの対応も必要です。 

重要なポイント

  • クリエイティブテストの目的は、以前のキャンペーンのパフォーマンスを上回る新しい広告を作成することです。クリエイティブ疲労を防ぎ、広告費の最適化にも役立ちます。
  • クリエイティブテストには包括的なプロセスが必要です。ギャップ分析に始まり、目標と仮説の定義、複数の広告バリエーションの作成、テスト手法の選択、テストの実施と続き、最後にパフォーマンスの分析と微調整を行います。
  • インプレッション、エンゲージメント、キャンペーンコスト、ROASの計測は、テスト目標を設定し、広告のパフォーマンスを最適化するうえで非常に重要です。 
  • クリエイティブ広告のテストを成功させるには、まず明確な仮説を立て、予算を均等に配分します。テスト間のつながりを考慮して計画を立て、結論を急ぎすぎないことが、テスト結果の精度向上につながります。さらに、自動化でテストプロセスを効率化することも検討しましょう。
  • ポストIDFAとSKAN 4.0の時代では、データが少なく、ユーザーエンゲージメントが重要であるため、広告クリエイティブをコンテキストとシームレスに統合し、ユーザーとの有意なつながりを確立する必要があります。
  • クリエイティブテストは継続的なプロセスであり、デジタル広告で最適な結果を得るには学習と適応を続けていく必要があります。

Shani Rosenfelder

Shaniは、AppsFlyerのコンテンツ&モバイルインサイトの責任者。10年以上にわたり、さまざまな大手オンライン企業や新興企業で、コンテンツやマーケティングの重要な役割を担ってきた経験を持つ。創造性、分析力、戦略的思考を兼ね備え、革新的なコンテンツ主導型プロジェクトを通じてブランドの評判と知名度を高めることに情熱を注いでいる。
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