iOS 14以降のアトリビューション:サイロから単一の信頼できるデータソース(SSOT)へ
2020年6月23日、Appleがモバイルアプリのエコシステムを大きく変えることになるiOS 14のアップデートを発表した日のことを、少し振り返ってみましょう。
エコシステム全体で、誰もが同じ疑問を抱き始めました。
- SKAdNetworkはマーケティング施策の計測手段として有効なのか?(答え:どちらとも言える)
- App Tracking Transparency(ATT)のポップアップにおけるオプトイン率はどうなるのか?(答え:想定より高い)
- ほとんどのユーザーがオプトインしないのであれば、ATTポップアップを表示する意味はあるのか?(答え:このユーザーサンプルが、全体ユーザーの理解に多くの示唆を与えるため)
これらはいずれももっともな疑問でしたが、時間が経つにつれて、最も重要な課題は実は次の点であることが明らかになりました。
これらの分断されたデータソースを、どのように単一の信頼できるデータソースへ統合するか?
この新しい現実の本質は、「複数の現実が存在する」という点にあります。iOS 14の登場以降、マーケターはさまざまなデータストリームを受け取るようになりました。具体的には、SKAdNetwork、ATTに同意したユーザーのデータ、確率論的モデリングによる集計データ、Incrementality for UA に基づくインサイト、Apple Search Ads向けの専用APIなどです。
では、これらのうちどれが本当の「真実」なのでしょうか?マーケターは、これらのデータをどのように見て、自信を持って意思決定を行えばよいのでしょうか?非常に重要な問いです。
この重要な課題に対して、私たちは解決策を用意しています。その前に、まずはこの問題の本質をもう少し詳しく見ていきましょう。
課題
本分析では、以下の3つのアトリビューションデータに焦点を当てます。
- SKAdNetwork:iOSによってデバイス上で実行されるアトリビューション
- ATT同意ユーザー:IDマッチングに基づくアトリビューション
- 非同意トラフィック:Aggregated Advanced Privacy(有料メディア向け)または確率論的モデリング(オウンドメディア向け)によるキャンペーンレベルの集計計測。これらの手法では、個別のデバイスやユーザーを特定することなくキャンペーンのパフォーマンスレポートを生成します。
SKAdNetworkには、他の手法と比べて2つの大きな利点があります。すなわち、決定論的であること、そしてすべてのユーザーをカバーしていることです。しかし一方で、大きな制約もあります。LTVの計測は非常に限定的であり、モバイルWebなど一部のフローをカバーしていないこと、ポストバックに遅延があること、不正の余地があることなどが挙げられます。
一方で、IDマッチング、Aggregated Advanced Privacy、確率論的モデリングにもそれぞれ利点がある一方で、固有の制約も存在します。
想定される解決策:用途に応じて最適なモデルを選択すること
なぜうまくいかないのか:理論上は問題解決のように見えますが、実際には不可能です。SKAdNetworkのデータは匿名化されているため、他のモデルで同じコンバージョンがアトリビューションされているかどうかを判別することができません。逆もまた同様です。
その結果、各インストールは次のいずれかに該当する可能性があります。
- SKAdNetworkのみによってアトリビューションされる
- 他のアトリビューション手法のみによってアトリビューションされる
- 両方でアトリビューションされる
- どの手法でもアトリビューションされない

これはまさにSKAdNetworkの本質である「匿名化」に起因します。ポストバック送信にランダムな遅延を持たせるなどの仕組みにより、ユーザーレベルでの照合ができないよう設計されています。
しかし現実には、広告主は2つの並行する「現実」に直面することになりました。
現在のiOS 14時代における多くのソリューションは、次のような状態になっています。

複数のAPIやダッシュボードの存在により、実行可能なインサイトに到達することはほぼ不可能です。唯一の解決策は、データを統合し、重複を排除し、一元化したダッシュボードまたはAPIを構築することです。その際には、ユーザープライバシーを保護しつつAppleのポリシーに準拠する必要があります。しかし前述の通り、これは実現できませんでした。
課題の解決
SKAdNetworkにはいくつかの制約がありますが、その多くはコンバージョン値の活用によって克服することが可能です。本ケースも例外ではありません。
私たちは、コンバージョン値を活用して、異なるアトリビューションソースを横断した単一の信頼できるデータソース(single source of truth)を構築します。
コンバージョン値は、iOS広告主がSKANキャンペーンにおいてユーザーのLTVを計測するための唯一の手段です。64通りの値を適切に設計・マッピングすることで、インストール後の収益、ユーザー行動、リテンションを計測することが可能になります。
最近リリースされたAppsFlyer Conversion Studioでは、これらの値を最大限活用できる柔軟な設定環境を提供しており、各コンバージョン値を最適に設計し、漏れなくマッピングすることができます。
コンバージョン値は、計測できるLTVの期間や粒度に制限がある一方で、データの重複排除を実現するための有効な手段でもあります。
具体的な仕組みを説明します。
- ユーザーが新規ダウンロードしたアプリを初めて起動した際、AppsFlyerはそのインストールのアトリビューションを試みます。
- AppsFlyerがアトリビューションできた場合、SKANのコンバージョン値の1ビットを使用し、「アトリビューション済み」であることを示すフラグをupdateConversionValueの呼び出しによって設定します。
- その後、AppsFlyerがSKANのポストバックを受信した際には、以下のロジックに基づいて単一の信頼できるデータソースを構築します:
AppsFlyerでアトリビューションされたユーザー + 「アトリビューション済みフラグがfalse」のSKANポストバック

単一の信頼できるデータソースに向けた重要なステップ
この仕組みを機能させるためには、重要な前提があります。それは、広告主がコンバージョン値の一部をデデュプリケーションのために割り当てる必要があるという点です。この設定は広告主自身がコントロールでき、必要に応じてオン・オフを切り替えられる必要があります。
新しくリリースされたConversion Studioでは、複数指標に対応したコンバージョン値の設定が可能であり、この機能も追加されています。

この設定をオンにすると、集計レポートにおいてデータの統合・重複排除・一元化が実行されます。
ユーザープライバシーへの影響は?
結論から言うと、まったく問題ありません。データは完全に匿名化されたままであり、閾値、タイマー、遅延といった仕組みによって、ユーザーレベルでの特定は不可能です。SKAdNetworkのプライバシー保護の仕組みはすべて維持されており、エンドユーザーのプライバシーが損なわれることは一切ありません。
最終的なデータはあくまで完全に集計レベルにとどまり、匿名化を解除する手段は存在しません。本アプローチは、あくまで複数の集計データの重複を排除し、純粋な集計ベースの単一データソースを実現するためのものです。
簡単に整理します:
メリット
サイロ化されたデータ → 単一の信頼できるデータソース
構図はシンプルです:
並行する複数のデータ → 意思決定が困難
単一の信頼できるデータソース → 実行可能なマーケティングインサイト
各モデルの利点を最大化
広告主が各集計モデル間でデータの重複排除を行えるようになることで、それぞれのメリットを活かすことができます。例えば:
- 従来のアトリビューションモデルによる完全なLTV計測
- SKAdNetworkによる完全なカバレッジと決定論的データ
これらを組み合わせることで、iOS 14以降の環境においても、より精度の高い意思決定が可能になります。
エンドユーザープライバシーを損なわない
SKAdNetworkのプライバシーフレームワークはそのまま維持されます。
SKAdNetworkのキャンペーン最適化への影響なし
SKAdNetworkのポストバックは、他のアトリビューション手法で計測されているかどうかに関わらず、すべてのユーザーに対して送信されます。そのため、広告ネットワークは引き続きSKANのコンバージョン値をもとに最適化を行うことができます。
結論:SKANのデータは引き続き完全かつ正確にカバーされるため、このデータを活用するすべての関係者に影響はありません。
デメリット
コンバージョン値:6ビット → 5ビット
前述の通り、1ビットはそのインストールが他のアトリビューション手法でも計測されているかどうかを示すために使用されます。そのため、コンバージョン値として利用可能なビット数はわずかに減少します。
本ソリューションの設計には、多くの大手顧客がパートナーとして参加しましたが、単一の信頼できるデータソースを実現できるのであれば、1ビットを割り当てることに前向きでした。ただし最終的には、この判断は広告主自身が行う必要があります。
まとめ
業界が新しい業界がこの新しい時代に適応し続ける中で、データの正確性とユーザープライバシーが両立することは極めて重要です。AppsFlyerでは、こうした変化に対応する広告主を支援することを使命としています。
マーケティング施策の真の成果を100%の確信を持って把握することは、非常に重要です。単一の信頼できるデータソースを持つことで、マーケターは広告費の最適化、ビジネスの成長、そしてエンドユーザーへの優れた体験提供を実現できます。