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SKAdNetwork(SKAN)

SKAdNetworkは、Appleが運用するプライバシーを重視したインターフェイスです。アドネットワークや広告主が個々のユーザーデータにアクセスすることなく、集約されたレベルで広告アクティビティ(インプレッション、クリック、アプリインストールなど)を計測できるようにするものです。

SKAdNetworkとは

2018年にAppleが導入したSKAdNetwork(SKANと略されることも多い)は、iOSに出稿している広告主にアトリビューションデータを提供し、キャンペーンの計測と最適化を可能にします。ユーザーレベルやデバイス固有のデータを明らかにすることなく、集約されたレベルで行うため、正確さとプライバシーを両立する形でキャンペーンインサイトのソースを提供できます。

ご存じでしたか?
SKAdNetworkはStoreKit Ad Networkの略です。StoreKitは、トランザクション、アプリ内購入、広告アトリビューションなど、iOSアプリのさまざまな機能や特徴を実現するフレームワークです。

仕組み


仕組みを解説する前に、4者の主なプレイヤーを押さえておきましょう。各自にそれぞれの役割と責任があります。 

  1. 媒体アプリ – 広告が表示されます。
  2. アドネットワーク – アプリの広告主とパブリッシャーをつなぎます。
  3. 対象アプリ – 広告の対象となるアプリです。
  4. モバイル計測パートナー(MMP) – アプリデータとキャンペーンパフォーマンスの指標をアトリビュートし、最適化することで、すべての点をつなげる役割を担います。SKAdNetworkを包括的に管理するので、マーケターは計測、可視化、最適化を簡単に行えます。

SKAdNetworkが登録するエンゲージメントは2種類あります。

  1. 表示 – 広告が表示されたかどうかを示します。
  2. StoreKitレンダリング – StoreKitレンダリングが生成されたかどうかを示します。

SKAdNetworkの流れ

  1. 媒体アプリに広告が表示されます。広告が表示されると同時に、媒体アプリで3秒間のタイマーが開始され、SKAdNetworkにその旨が通知されます。
  2. 広告が3秒以上表示されると、媒体アプリからSKAdNetworkに3秒間のタイマーが終了したことが通知され、このアクティビティは表示成功として記録されます。ユーザーが広告にエンゲージすると、パブリッシャーは広告対象アプリのStoreKitをレンダリングします。 
  3. 表示されると、SKAdNetworkではStoreKitが正常にレンダリングされたことが登録されます。うまくいけば、次のステップでユーザーが広告対象アプリをダウンロードします。 
  4. StoreKitがレンダリングされると、ユーザーはその場でアプリをダウンロードできます。ユーザーがアプリをインストールし、SKAdNetworkのアトリビューション期間内に起動した場合、インストールはアドネットワークにアトリビュートされ、デバイスからインストールポストバックがアドネットワークに、コピーが広告主に送信されます。

ポストバックに関する注意

ポストバックとは、アトリビューションプロバイダー(この場合はSKAdNetwork)が、ユーザーの行動(広告をクリックしたか、アプリをダウンロードしたかなど)に関するデータをアドネットワークや広告主に送り返すことです。このデータは、広告主がキャンペーンを最適化するための重要なフィードバックとなります。 

標準的なポストバックとは異なり、SKAdNetworkのポストバックは、アプリの初回起動時に即座にアドネットワークや広告主に送信されるわけではありません。実際、アトリビューション期間(広告のインプレッションやエンゲージメントがコンバージョンにつながったとみなされる期間)は、広告の種類にもよりますが、クリックからインストールまで最大30日間にもなります。 

SKAdNetworkのポストバックにはタイマーの概念が導入されており、タイマーが切れたときのみポストバックを送信します。タイマーにより、ポストバックは最低でも24時間遅れます。アドネットワークや広告主は、タイマーが切れてからポストバックを受け取ります。 

重要なのは、ポストバックにデバイスやユーザーのデータは含まれないということです。タイマーによる遅延と合わせて、特定のユーザーを選出できないようにすることで、ユーザーデータの匿名性を確保しています。

広告主がAppsFlyerなどのMMPと連携している場合、ポストバックは専用のダッシュボードやAPIを介して、または広告主が構成した方法でMMPに報告されます。

課題と対処法

従来のアトリビューション方法と比べると、SKAdNetworkは広告主にとって複雑な点が多く、課題もたくさんあります。そのいくつかをご紹介します。

  • 実際のROI/LTVを得られない – SKAdNetworkは主にインストール数、コンバージョン値、インストール後のデータを計測しますが、非常に限定的で時間制限もあります。SKAN 4.0より前は、顧客生涯価値(LTV)の計測は24時間以内、または広告主が定義したアクティビティ期間内に制限されていました。しかし、SKAN 4.0の導入により、広告主は異なる時間枠(0~2日、3~7日、8~35日)ごとに1回ずつ、最大3回のポストバックを受け取れるようになりました。
  • 粒度 – SKANのバージョン2および3では、データの粒度はディメンションの点で制限され、SKANキャンペーンは100件に限定されていました。しかし、SKAN 4.0では粒度が向上し、最大1万件のSKANキャンペーンに対応可能になりました。
  • ポストバックの遅延 – ポストバックが少なくとも24時間遅延するため、キャンペーンを最適化するスピードが制限されます。
  • アドフラウドのリスク – データは転送中に簡単に操作できてしまうため、予算が無駄になる可能性があります。
  • リエンゲージメントアクティビティに対応するアトリビューションがない – リエンゲージメントは、離脱を減らし、ユーザーロイヤルティを高めるには不可欠です。 

幸いなことに、このような課題に対処する方法がありますので、獲得したユーザーの価値を計測し、予測し続けることができます。 

SKAdNetworkの価値を引き出す鍵は、Apple独自のコンバージョン値のメカニズムを理解することです。

コンバージョン値の仕組み

コンバージョン値とは、アプリインストール後に発生したアプリ内行動をインストールにひも付けるためのものです。コンバージョン値の設定は、アプリデベロッパー側で行えます。Appleはアドネットワークと広告主に1回だけポストバックを送信しますが、この1回限りのポストバックにコンバージョン値が1つだけ含まれます。 

コンバージョン値に含まれる情報は、アプリインストール後にユーザーが行った行動(ユーザーが「トラッキング」を拒否していると想定)を知る唯一の情報源となるため、コンバージョン値はとても重要な役割を持っています。結局のところ、フリーミアムモデルが採用されているアプリを最適化するには、インストール後のデータが必要になります。

SKAN 4.0からは、2種類のコンバージョン値を利用できます。 

  • 細かい粒度のコンバージョン値:6ビットで定義されており、2進法を使います。ビットのON/OFFの状態を「0」と「1」の2つの数字を使って表現します。6ビットで0~63までの合計64種類の組み合わせを作り、コンバージョン値を計測します。限定的に感じるかもしれませんが、収益、エンゲージメント、マーケティングファネルの行動段階など、幅広く計測できます。 
  • 粗い粒度のコンバージョン値:低、中、高の3つの種類に分けられます。これらの値は、さまざまなレベルのユーザーエンゲージメントを示すために広告主によって割り当てられ、プライバシーのしきい値が満たされていない場合に、広告主が少なくとも一部のアトリビューションデータを受け取ることができるようにします。 

コンバージョン値を内部ロジックに従って適切にマッピングすれば、この値を思い通りに使用できます。この値は、アプリにとってもっとも重要なKPIにもとづいて、自由に使い道を決められます。 

64種類の細かい粒度の値と3種類の粗い粒度の値は、アプリデベロッパーまたは広告主によって、それぞれデコードする方法が個別に設定され、アプリのインストールに貢献したキャンペーンに成果をひも付けて、最適化をはかります。

アプリの種類によって、有効なアプローチは異なります。たとえば、AppsFlyerのConversion Studioで得られたデータによると、ゲームアプリでは収益に的が絞られていることがわかります。つまり、ほとんどのコンバージョン値のスキームで使用されているのはこのモデルです。ゲーム以外のアプリの設定でもっともよく使われているのは、アプリ内アクティビティです。

アクティビティ期間のタイマーのベンチマーク、64種類の組み合わせの最適な使用方法など、コンバージョン値を活用する方法について詳しくは、こちらをご確認ください。 

SKAdNetwork 4.0(SKAN 4.0)

2022年10月24日、AppleはSKAdNetworkの次期バージョン(4.0)をリリースしました。大きな変更が実装され、広告主やアドネットワークは、ユーザーのプライバシーを維持しながらより多くの計測を行えるようになりました。

ポストバックが1回から3回に

SKAdNetwork 4.0では、広告主は最大3回のポストバックを受け取ることができます。ポストバックはそれぞれ、特定のアクティビティ期間(0~2日、3~7日、8~35日)にもとづきます。これらのポストバックにより、広告主はユーザーがアプリをどのように利用しているかを把握できます。 

最初のポストバックは、以前と同様に24~48時間以内に送信されます。しかし、2回目、3回目のポストバックではタイマーが長くなり、24~144時間後に送信されます。

この3回のポストバックは、特定のユーザーと結びつけて考えることはできません。広告主は、あくまでもイベントのユニーク発生回数をカウントできるということです。

LockWindow

各ポストバックは限られたアクティビティ期間にもとづきますが、SKAN 4.0では「LockWindow」と呼ばれる新しい機能も導入されています。この機能により、アプリデベロッパーはコンバージョン値を確定し、計測期間を固定することで、ポストバックをより早く受け取ることができます。たとえば、アプリデベロッパーは、2回目のポストバックの期間を3日目から7日目の間で固定できます。

SKAN 4.0 LockWindow
ソース:Apple Developer

クラウド(集団)の匿名性

クラウドの匿名性は、Appleの新しい概念で、SKANでアトリビューションデータを配信する際にどのようにプライバシーが保護されるのかを示すものです。簡単にまとめると、インストール数が多ければ多いほど、より多くのデータを取得できます。

ユーザーのプライバシーを維持するために、AppleはSKANがポストバックで共有するデータを制限しています。ポストバックデータ層は、以下に示すようにキャンペーンのコンバージョン数にもとづいています。

SKAN 4.0 - クラウドの匿名性
ソース:Apple Developer

Appleは、各インストールが属するクラウド匿名層を決定し、それに応じてデータを共有します。 

たとえば、階層0の広告の場合、ポストバックにコンバージョン値(null)は含まれません。一方、階層1の広告では、最初のポストバックに粗いコンバージョン値と2桁のソースIDのみが含まれます。ただし、階層2または3の広告では、最初のポストバックに細かいコンバージョン値と2~4桁のソースIDが含まれます。2回目と3回目のポストバックには、クラウドの匿名層が0より上の場合にのみ共有され、粗いコンバージョン値と2桁のソースIDのみが含まれます。

以下にまとめます。

階層型コンバージョン値とソースID

SKAdNetworkの以前のバージョンでは、Appleのプライバシーしきい値が満たされている場合にのみ、ポストバックにコンバージョン値が含まれていました。クラウドの匿名性が低い場合、Appleは、コンバージョン値とソースアプリIDをマスクすることで、ユーザーのプライバシーを保護するために特別な予防措置を講じます。 

SKAdNetwork 4.0では、(現在存在する64種類の「細かい」値に加えて)「粗い」コンバージョン値の新しいセットが導入されています。  

前述したように、粗いコンバージョン値は低、中、高の3種類に分けられます。広告主は、これらの値を割り当てさまざまな程度のユーザーエンゲージメントを示すことで、特にクラウドの匿名性が低いレベルでは、プライバシーのしきい値に達していないときに一部のアトリビューションデータを取得できます。

SKAN 4.0のもう1つの変更点は、ソースIDに関するものです。これもキャンペーンの粒度に大きな影響を与えます。Appleは、キャンペーンIDフィールドの名称をソースIDに変更しました。この変更に伴い、IDの範囲を2桁(100オプションに相当)から4桁(1万オプションに相当)に拡大しました。

ソースIDは1つの数字として表示されますが、Appleは広告主に対して、3つの階層的な数字の並びとして解釈するよう求めています。このアプローチを採用することで、広告主は、広告の配置、地域ターゲティング、クリエイティブコンポーネントなどの要素を含むさまざまなパラメーターを、包括的に計測できるようになります。

SKAdNetwork 4.0 - 新機能
ソース:AppleのSKAdNetworkの新機能 — WWDC22動画

粗いコンバージョン値は、2回目と3回目のポストバックで提供されます。プライバシーのしきい値が満たされていない場合は、1回目のポストバックで提供されます。一方、細かいコンバージョン値は最初のポストバックにのみ含まれます。

階層型ソースID

SKAN 4.0以降、AppleはキャンペーンIDフィールドの名称をソースIDに変更し、その範囲を2桁(100オプションを表す)から4桁(1万オプションを表す)に増やしています。 

ソースIDは1つの数字ですが、Appleは広告主が3つの階層的な数字として使用することを推奨しています。これにより、広告の配置、地域、クリエイティブなど、より多くのパラメーターを計測できるようになります。

階層型コンバージョン値と同様に、階層型ソースIDもAppleのプライバシーしきい値に準拠します。つまり、クラウドの匿名性のレベルが高いほど、提供される粒度のレベルが高くなります。

SKAdNetwork 4.0階層型ソースID
ソース:AppleのSKAdNetworkの新機能 — WWDC22動画

階層型コンバージョン値と同様に、階層型ソースIDもAppleのプライバシーしきい値に準拠します。つまり、提供される粒度のレベルがクラウドの匿名性のレベルと直接ひも付いており、多様なプライバシー要件に適応可能なシステムとなっています。

ポストバック1回目ポストバック2&3回目
クラウドの匿名層02桁のソースIDのみ x
クラウドの匿名層12桁のソースID 粗いコンバージョン値
2桁のソースIDのみ
粗いコンバージョン値
クラウドの匿名層22、3、または4桁のソースID
細かいコンバージョン値
2桁のソースIDのみ
粗いコンバージョン値
クラウドの匿名層32、3、または4桁のソースID
細かいコンバージョン値 ソースアプリID/ソースドメイン
2桁のソースIDのみ
粗いコンバージョン値

Web-to-appに対応

これまでは、広告主が計測できるのはApp-to-appフローだけで、Web-to-appフローはサポートされていませんでした。SKAN 4.0では、SafariのWeb-to-appアトリビューションがサポートされ、広告主は複数のチャネルでキャンペーンのパフォーマンスを計測できるようになりました。

SKAN 4.0での変更点と戦略構築について詳しくは、こちらを参照してください。

広告主向けのSKAdNetworkの活用方法

SKAdNetworkに確実に対応するためのいくつかの方法を紹介します。

  • データの集約 – 各アドネットワークからSKAdNetworkの全情報を収集します。
  • データの検証 – すべてのポストバックがAppleによって署名されていること、伝送過程で不正な加工が施されていないことを確認します。これに確実に対処するには、信頼できるMMPとの連携が必要です。
  • データの強化 – SKAdNetworkの情報をインプレッション、クリック、コスト、オーガニックトラフィックなどのほかのデータポイントと照合し、完全なROI分析を行います。
  • データの有効化 – 専用のダッシュボードとインターフェイスを使用して、データをわかりやすく、利用しやすく表示します。MMPはそのサポートを担います。 
  • シームレスな連携 – 利用中のモバイルアトリビューションソリューションが完全なカプセル化に対応していることを確認します。カプセル化により、特にSKAdNetworkのプロトコルが今後変更された場合でも、無駄な時間と労力をかけずにすみます。
  • コンバージョンイベント – サーバー側で動的かつ柔軟なアプリ内イベントの計測を行います。

重要なポイント

モバイル広告業界がプライバシー中心の時代に適応する中で、計測、アトリビュート、最適化の機能はこれからも向上していくでしょう。優れたモデル、予測分析の利用拡大、SKANにおける専門知識の習得、エコシステム全体の革新など、さまざまな要素が計測可能性の向上を後押ししています。 

広告主のための推奨事項:

  • 使いやすいツールを利用してコンバージョン値をマッピングし、頻繁に更新して、開発に不要な時間を費やすことなく、64種類のコンバージョン値を最大限に活用します。
  • 予測分析により、時間制限の問題を解決し、初期に発生したエンゲージメント行動を収集して、広告キャンペーンのパフォーマンスを長期的に予測します。SKAdNetworkでモバイルアトリビューションを自動的に計測して、計測されるデータや計測時間の制約を取り払うことによって、この新たな現実の中で競争優位性を維持および強化できます。
  • 新しいiOS 14エコシステムでは、あらゆるタイプの不正からデータを安全に守る必要があります。MMPは、キャンペーンのパフォーマンスに関する正確なデータを入手できるようにして、SKAdNetworkでの不正から広告主を保護します。構造上の欠点、データの制約、レポートに潜む落とし穴に対してエンドツーエンドの解決策を提供し、インストール前からインストール後までの広告費を守ります。
  • エコシステムとの連携 – Facebook、Twitter、Snap、ironSourceなどのアドネットワークとつながりのあるMMPと連携します。強固な協力体制を整え、ポストバック、コンバージョン値のスキーマ、データがMMPなどのパートナーにスムーズかつ簡単に配信されるようにします。
  • SKANの専門知識を採用し、エコシステム全体のイノベーションを実現します。 
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Background
より多くの顧客を獲得し、コンバージョン率の向上を目指しましょう