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ウォールドガーデン (Walled garden)

ウォールドガーデン

ウォールドガーデンはデータクリーンルームのサブカテゴリに当たります。アドテック分野ではクローズドプラットフォームやクローズドエコシステムとも呼ばれ、テクノロジープロバイダーが当事者と共有するハードウェア、アプリケーション、コンテンツに対して大きな力を持ちます。

ウォールドガーデンとは

ここ数年の業界レポートや分析には、「ウォールドガーデン」という言葉が必ずと言っていいほど登場します。近年のプライバシーをめぐる変更の動きにより、マーケターは以前のようにユーザーレベルデータにアクセスすることが難しくなりました。そのような状況で注目を浴びているのが、ウォールドガーデンです。

ウォールドガーデンとはデータクリーンルームの一種で、ユーザーレベルデータを非識別化し、共通の属性に基づいてクラスタリングすることで、いわば個人を群衆に隠すことができます。 

ウォールドガーデンを早い段階でアドテック分野に導入したGoogle、Amazon、Meta(Facebook)らは、ファーストパーティーデータを安全にビジネスに活用しながら、プラットフォームを利用するライバルから広告収益を得ています。  

言うまでもなく、全広告メディア支出の70%近くがこの3つの巨大企業に集中しており、3社とも各自の「壁に囲まれた庭」という環境で広告主が活動をすることを許可しています。Google Ads Data Hub(ADH)、Facebook Advanced Analytics(FAA)、Amazon Marketing Cloud(AMC)がその「庭」に当たります。  

このようなセキュリティの厳しい環境では、メガSRN(セルフレポーティングネットワーク)がイベントレベルデータへのアクセスを可能にしているため、マーケターは消費者のプライバシーやエコシステムの防衛網を危険にさらすことなく、十分な情報を得たうえでキャンペーンの決定を下せるようになります。

ウォールドガーデンの現状

ウォールドガーデンの現状

データクリーンルームとウォールドガーデンにより、マーケターはプライバシー規制を順守しながら、統合されたデータセットの力を活かすことができます。 

個人を特定できる情報(PII)や属性制限されたデータは関係者に一切公開されないため、固有の識別子で個々のユーザーを識別することは不可能です。

多くの場合、このような環境から得られるのは集計レベルのインサイトのみです。たとえば、「アクションXを実行したユーザーにはYが提供される」などです。ユーザーレベルの情報提供が可能なのは、当事者全員の完全な同意が得られている場合のみです。

ウォールドガーデンの運用は、データを守るというシンプルな話ではありません。このようなクローズドプラットフォームには、トラッカー、開発者、設計者、彼らをまとめる管理チームなど、数多くの社内ソリューションが必要です。 

リソースとスタッフに非常に大きな負荷がかかる仕組みであるため、ウォールドガーデンの構築、維持、拡張に取り組める企業はごくわずかです。

用語の定義をご理解いただいたところで、代表的なウォールドガーデンを紹介します。

Google

Googleは、約15億件のGmailアカウントを抱え、毎月1,000億超の検索回数を誇る世界最大のデジタル広告企業であり、広告主はアドマネージャーをウォールドガーデンとして用いてキャンペーンのインサイトを活用できます。

Meta(Facebook)

Metaは30億人近いユーザーを抱え、膨大な量のユーザーレベルデータにアクセスできます。そのデータを活用し、非常に包括的な広告ターゲティング機能を提供しています。 

Metaでは、広告主は自身のデータマネジメントプラットフォーム(DMP)、デマンドサイドプラットフォーム(DSP)、ダイナミッククリエイティブの最適化(DCO)を使用する必要がありますが、キャンペーンのパフォーマンスデータの多くを社内で保持できます。

Amazon

Amazonは先日、Amazon Adsサービスによる2021年の広告収益が310億ドルを超えたと発表。これでAmazonはGoogle、Metaに次ぐ世界第3位のデジタル広告企業になりました。 AmazonはGoogleやMetaと同じようなウォールドガーデン機能を備えていることに加え、プラットフォーム上で毎秒18.5件発生する商品購入から独自の購買データを活用できます。

ウォールドガーデンのメリットとデメリット

ウォールドガーデンのメリットとデメリット

メリット

メリット1:ファーストパーティーのデータセットをイベントレベルデータで補強

一般に、データクリーンルームが信頼性の高いプラットフォームになっている重要な要因として、信頼できるプロバイダーによるデータガバナンスに加え、データへのアクセス、利用可能性、使用についてすべての当事者の合意が取れているという事実があります。

このフレームワークでは、ある当事者が他の当事者のデータにアクセスできないようになっています。これにより、個人データやユーザーレベルデータを、同意なく複数の企業間で共有することはできないという基本原則が守られます。

リーチと頻度、オーディエンスの重複、クロスプラットフォームのプランニングと分布、購買行動、デモグラフィックなど、共通のオーディエンスについて他の当事者がすでに知っていることを確認できるほか、ウォールドガーデンはキャンペーンのパフォーマンスを計測する中間的なツールとしても使用できます。 

ウォールドガーデンを利用するブランドは、オーディエンスインサイトを推測するのではなく、プライバシーをしっかりと保護した状態で、AmazonやGoogleのファーストパーティーデータの内容を正確に知ることができます。

広告主は、セグメンテーションおよび類似のオーディエンスなどの情報を、個人の識別情報を伴わない形で集計できます。この情報をパブリッシャー、DSP、またはアドネットワークと共有して、キャンペーンに役立てることができます。 

ウォールドガーデンのメリットとデメリット

メリット2:正確なキャンペーン計測

Google、Meta、New York Timesなどのウォールドガーデンは、豊富なユーザーレベルデータを保有しています。広告主はウォールドガーデン環境下そうしたデータを活用し、パーソナライズとターゲティングの精度を上げながら、キャンペーンを成功に導くことができます。

メリット3:ユーザーのプライバシー

ウォールドガーデンには、プライバシーとセキュリティに厳格な基準が導入されています。ユーザーレベルデータは暗号化されるため、他の当事者はアクセスできません。ウォールドガーデンプロバイダーは、さまざまな仕組みを用いてデータの安全性を確保しています。

メリット4:クロスデバイスユーザーエンゲージメント

多くのユーザーがさまざまな行動を起こしますが、特にAmazonでのショッピングやGoogle検索などは、スマートフォン、ノートパソコン、あるいはタブレットといった複数のデバイスから行われます。 

ウォールドガーデンで得られた貴重なクロスデバイスデータは、キャンペーンのリーチや最適化を目的として、匿名化されたうえで広告主と共有されます。

デメリット 

デメリット1:分析用の素材を提供

このデータを一般のマーケターが読めるようにするには、データサイエンティスト、アナリスト、エンジニアなどのチームが必要で、実用的なインサイトを得るためのプロセスが必然的により複雑で手間のかかるものになります。

デメリット2:堅牢なアーキテクチャと厳格なクエリ機能

プライバシーチェックが発動した場合、警告なく行がフィルタリングされることがあります。プライバシーチェックの中には、過去の結果と比較し、ジョブ間で結果が十分に変化しない場合に発動されるものがあります。また、Ads Data Hubに提供されるデータは変更される可能性があります。

デメリット3:データをクロスプラットフォームで活用できない

インサイトを得られても、活用できるのはそのウォールドガーデンネットワーク内のみです。Metaで得られたインサイトをGoogleに適用することはできません。

デメリット4:企業間データ連携の欠如

ウォールドガーデンソリューションは、当事者間の連携を目的としたものではなく、あくまでブランドのファーストパーティーデータとウォールドガーデンのデータをマッチングさせるためのものです。

デメリット5:卵を1つのカゴに盛る

GoogleによるサードパーティーCookie廃止の目標期日が近づく中、多くのブランドにとってGoogleのサンドボックスが唯一の選択肢になるように思われます。しかし、1つのウォールドガーデンに依存しすぎると、何かよくないことが起きた場合に企業はさまざまな問題にさらされる可能性があります。そこが、バランスの取れた健全な組み合わせとの違いです。 

さらに、ウォールドガーデンプロバイダーの決定やアルゴリズムを当事者は監査することができません。これはいわばブラックボックスであり、広告主の懸念材料となっています。

ウォールドガーデンのデータ深度

アドテック分野におけるウォールドガーデンの未来

Google、Amazon、Meta、Twitter、Snapが提供するウォールドガーデンプラットフォームは、パブリッシャー、広告主、マーケターなど、エコシステム全体のあらゆるプレーヤーのビジネスにおいて重要な役割を担っています。 

その魅力はやはり、世界中の何十億というユーザーのユーザーレベルデータにアクセスできることです。

デマンドサイドで競争が激化すれば、利用可能なインプレッションに対してより良い収益が発生するという点で、パブリッシャーに直接的な利益をもたらします。Digidayによると、これがヘッダー入札が広く採用されている理由であり、ウォールドガーデンがパブリッシャーに与える影響の好例であるといいます。

サードパーティーcookieの廃止により、プログラマティック広告を配信するパブリッシャーのeCPMが低下し、その結果、月間の広告収益の減少が予想されます。しかし、Metaのようなウォールドガーデンは、キャンペーンのセグメンテーションに主にファーストパーティーデータを活用しているため、cookieの廃止によって大きな打撃を受けることはないでしょう。 

重要なポイント 

  • ウォールドガーデンとはデータクリーンルームの一種で、ユーザーレベルデータを非識別化し、共通の属性に基づいてクラスタリングすることで、いわば個人を群衆に隠すことができます。 
  • こうした環境では、ウォールドガーデンプロバイダーが当事者と共有するハードウェア、アプリケーション、コンテンツに対して大きな力を持ちます。
  • ウォールドガーデンにより、マーケターはプライバシー規制を順守しながら、統合されたデータセットの力を活かすことができます。PIIや属性制限されたデータは関係者に一切公開されないため、固有の識別子で個々のユーザーを識別することは不可能です。
  • 多くの場合、このような環境から得られるのは集計レベルのインサイトのみです。たとえば、「アクションXを実行したユーザーにはYが提供される」などです。ユーザーレベルの情報提供が可能なのは、当事者全員の完全な同意が得られている場合のみです。
  • ウォールドガーデンは、あらゆる当事者にとってメリットもデメリットもあります。ネイティブエコシステムの膨大なデータにアクセスできますが、クロスチャネルでは利用できません。データの特徴は非常に深く、非常に狭い(クロスチャネルで組み合わせることができない)。エンジニアがローデータを実用的なインサイトに変換する必要があり、クエリにはほとんど柔軟性がありません。
Background
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